第97話 昼間の東京 ページ48
◆
「暑いね…」
「…暑いな」
それでも、繋いだ手は離さなかった。
お互いの体温が溶け合ってひとつになるような、そんな感じ。
くすぐったくて、胸の奥がぎゅっとした。
日傘と重なる二つの影がほんの少し揺らぐ。
「西谷先輩、あんなこと言うタイプだっけ?」
「たしかに」
言わなそうだけど、相手がAだからじゃないのか?と思ったりした。
何となく、甘やかしたくなる雰囲気があるから。Aって。
そう感じているのが俺の他にもいるとしたら、ちょっとムカつくけど。
俺だけでいいし。
独占欲。
俺にもそういうもんがあるらしい。
「そういえば、こうやって二人で歩くの、前の合宿のとき思い出すよな」
確信犯的にそのことに触れると、予想通り、Aは頬を染めた。
わかりやすいな、相変わらず。
小さく笑うと、『仕方ないじゃん』と、Aはもっと顔を赤らめた。
ああ、また、そういう顔するから。
そういうのが煽ってるって、そろそろ気づけ。
鈍感。
でもそこが好き。Aらしいところが。
昼間の東京は、夜とはまた違う景色が広がる。
「前のときとあんまり時間経ってないのに、何か私、前より飛雄くんと近づけた気がしてる」
Aが遠くの空を見上げたあと、俺と目を合わせた。
不意に心臓がドクンと跳ねた。
「…俺も、そんな気がしてた」
自分でも驚くほど、柔らかい声が漏れる。
頬が緩んでドキドキして、体が熱くなった。
初すぎねぇか、俺。
大丈夫か?
何かダサい。
けど、Aの目には、カッコよく映っといてほしい。
だから、君の髪の毛をさらりと撫でて誤魔化した。
なのにAは、『飛雄くん、好きだよ』とか言って、また俺を困らせる。
今やっと治まった熱がぶり返すのはとっても容易い。
『…お、俺も』とたどたどしく答えた俺、全然カッコよくない。
“俺は、愛してる”的な、甘いセリフ言うつもりだったのに、そんなもん無理だった。
何かもう、好きだけで手一杯。
それ以上を考えると、脳みそ爆発する。
「あっ、ねぇ今照れた?」
「は?照れてねぇ」
精いっぱいの強がり。
するとAは、『え〜うそ。絶対照れたと思ったんだけどなぁ』と頬をぷっくり膨らませた。
大丈夫、ちゃんと照れてるから。
カッコ悪いから言わねぇけど。
そう思いながら、Aの頭をくしゃりと撫でて、その頬にキスをした。
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pomme(プロフ) - riさん» ありがとうございます〜!!🫶🏻 (2022年5月21日 16時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
ri(プロフ) - 最高でした〜〜🥲💗💗💗 (2022年5月21日 10時) (レス) @page50 id: d86ac26d68 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 黒猫。さん» いつもありがとうございます!!!黒猫さんの熱超ヤバいし、嬉しすぎるし、ありがたいしで狂っちゃう!もうほんと、マジありがとうございます🫶🏻🫶🏻頑張ります〜! (2022年5月6日 20時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
黒猫。(プロフ) - うわああああ!!…わあ。語彙力吹っ飛びました!!もう!好き!コメ欄が黒猫ばっかになってすみません本当に!愛が溢れてまう…!!とりあえず主様を神と崇めさせていただいてよろしいでしょうか!!かっ…げやまぁ!!完結まで応援しますわ…影山との恋の行方を見届けます! (2022年5月5日 20時) (レス) @page42 id: abf8c53ec1 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 黒猫。さん» ありがとうございます!!!嬉しすぎて、もう泣いちゃう!!素敵なありがたすぎるお言葉、何度も読み返してニンマリしてます……🫶🏻いい夢見れそう… (2022年4月11日 23時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pomme | 作成日時:2022年1月20日 23時