第90話 労ってくれ ページ41
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「いいぞ〜!いけるぞ〜」
菅原先輩、いつになく気合い入ってる気がする。
私もね、頑張んなきゃね。
目の前の試合と、スコアを取ることに集中した。
リエーフくん、デッカァ。
西谷先輩カッケェ。
日向のジャンプヤバァ。
集中集中と思っても、目につくもの全てがエンタメなんだから、仕方ない。
意味もなく咳払いをして、ペンを握り直した。
その時だった。
「Aちゃんっ!危ない!」
「えっ?」
菅原先輩の声に反応してスコアボードから顔を上げたその時、半端ない衝撃が額を貫いた。
その反動で、脚がもつれて、後ろにあったパイプ椅子に思いっ切り倒れ込んだ。
ガシャガシャと耳障りな音がする。
「痛っ……」
身体を起こすと、頭がぼーっとした。
ただでさえ寝不足なのに、この仕打ちはひどいです。誰ですか、私にボールぶつけた人。
……つっても、避けなかった私もアレだよね。
「A!大丈夫か?」
鵜飼コーチかキャプテンかわかんないけど、超焦ってる声が聞こえた。
「大丈夫です。元気です」
親指をグッと突き出す。
「Aちゃん、血……血が出てる…」
仁花ちゃんの怯えた声も聞こえた。
血っても、大したことなかった。ただのかすり傷だ。
『あ、ホントだ。すみません、医務室行ってきます』と、立ち上がろうとしたけど、ふらついて、また体育館の床にペタリと座った。
「Aちゃん大丈夫じゃないから、それ。先生、私が一緒に…」
焦る潔子さんを、遮った人がいた。
「いや、俺が……俺が連れて行きます」
「え?影山?」
大きな声出す田中先輩よりも、驚いたのは私だった。
「待って、何で」
困惑する私なんか見えていないみたいに、私の声には耳をかさない。
それなのに、労わるように優しく私の手を取った。
まだまだ困惑しながらその手を握り返すと、不意に体が宙に浮いた。
「……えっ…???まって、下ろして……!」
「うるせぇ。怪我人は安静にしてろ」
顔に近いところで聞こえる、君の声。
ブワッと情けないくらい、簡単に頬が染まった。
「ぷっ、さすが、“王子様”は違うね」
月島くんが静かにこぼすと、それが聞こえたのか、その場にいたみんながどっと笑った。
その声を背中に、いつもと違う視点で流れていく景色を目に焼き付けた。
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pomme(プロフ) - riさん» ありがとうございます〜!!🫶🏻 (2022年5月21日 16時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
ri(プロフ) - 最高でした〜〜🥲💗💗💗 (2022年5月21日 10時) (レス) @page50 id: d86ac26d68 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 黒猫。さん» いつもありがとうございます!!!黒猫さんの熱超ヤバいし、嬉しすぎるし、ありがたいしで狂っちゃう!もうほんと、マジありがとうございます🫶🏻🫶🏻頑張ります〜! (2022年5月6日 20時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
黒猫。(プロフ) - うわああああ!!…わあ。語彙力吹っ飛びました!!もう!好き!コメ欄が黒猫ばっかになってすみません本当に!愛が溢れてまう…!!とりあえず主様を神と崇めさせていただいてよろしいでしょうか!!かっ…げやまぁ!!完結まで応援しますわ…影山との恋の行方を見届けます! (2022年5月5日 20時) (レス) @page42 id: abf8c53ec1 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 黒猫。さん» ありがとうございます!!!嬉しすぎて、もう泣いちゃう!!素敵なありがたすぎるお言葉、何度も読み返してニンマリしてます……🫶🏻いい夢見れそう… (2022年4月11日 23時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pomme | 作成日時:2022年1月20日 23時