第78話 意外な一面 ページ29
.
まるで何事もなかったかのように、滞りなく練習は進み、1日が終わった。
それもそうだ。
“何事かあった”のは、私たちだけなのだから。
あれから一言も言葉を交わせぬまま、過ぎてしまった時間。
伝えないまま、黙っていたこと。
寂しそうな目。
何も言えなかったこと。
いろんな後悔が頭の中をぐるぐると回った。
はぁ…と、小さくため息をついて、傾き始めた太陽と沈んだ気持ちを重ねてみたりした。
どうにかしなきゃ。
でも、何一つわからなくて、シャツの裾をキュッと握りしめる。
口を固く結んで、地面を見つめた。
「あのさぁ、そういうの別にいいけど、僕らとは関係ないところでやってくれない?迷惑なんだけど」
ハッとして顔を上げると、相変わらずな表情をした月島くんが、腕組みしながらこっちを見ていた。
「えっ、ああ……。ご、ごめんね」
そう言うと、月島くんはフッと小さく鼻で笑った。
「Aさんでも落ち込むことあるんだ」
「月島くん、ふつうに失礼」
「いやだって、らしくないから気持ち悪い。キミはバカみたいにヘラヘラ笑ってないと、死ぬんじゃないの?」
「死にません!てか私、月島くんにそんな風に思われてたの?ちょっとショックなんだけど」
軽く睨むと、月島くんはメガネをカチャリと上げて、ククッと喉で笑った。
「まあ、せいぜい頑張れば?あ、迷惑はかけないでよ」
月島くんがニヤリと口角を上げる。
「言われなくてもわかってるし」
忠告なんかされなくたって、何とかしなきゃって、思ってるもん。
このままじゃ、ダメなこともわかってるし。
「あ、それと…」
「何?まだあるの?」
「王様の機嫌とれるの、キミしかいないから。よろしく」
月島くんはそれだけ言って、スタスタと宿舎の方へ歩いて行った。
やめてよ、月島くん。
キミがそんなこと言うとか、笑っちゃうじゃん。
他人に興味なさそうで、いつも飄々としてる。
だけど、誰よりも他人の変化に敏感で、自分の変化には少し怯えている。
バレー部で過ごすうちに、だんだんわかってきた。
こんな時にわざわざ声をかけてくれるくらい、優しい人であることも。
月島くん、いいヤツだなぁ。
遠ざかる背中に向かって、ぽつりと溢した。
267人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
pomme(プロフ) - riさん» ありがとうございます〜!!🫶🏻 (2022年5月21日 16時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
ri(プロフ) - 最高でした〜〜🥲💗💗💗 (2022年5月21日 10時) (レス) @page50 id: d86ac26d68 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 黒猫。さん» いつもありがとうございます!!!黒猫さんの熱超ヤバいし、嬉しすぎるし、ありがたいしで狂っちゃう!もうほんと、マジありがとうございます🫶🏻🫶🏻頑張ります〜! (2022年5月6日 20時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
黒猫。(プロフ) - うわああああ!!…わあ。語彙力吹っ飛びました!!もう!好き!コメ欄が黒猫ばっかになってすみません本当に!愛が溢れてまう…!!とりあえず主様を神と崇めさせていただいてよろしいでしょうか!!かっ…げやまぁ!!完結まで応援しますわ…影山との恋の行方を見届けます! (2022年5月5日 20時) (レス) @page42 id: abf8c53ec1 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 黒猫。さん» ありがとうございます!!!嬉しすぎて、もう泣いちゃう!!素敵なありがたすぎるお言葉、何度も読み返してニンマリしてます……🫶🏻いい夢見れそう… (2022年4月11日 23時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:pomme | 作成日時:2022年1月20日 23時