第76話 とめどなく ページ27
◆
梟谷との対戦が終わるとすぐに始まる、坂道ダッシュ。
猛暑の中走らせるとか、アホじゃねぇのかと思う。
死人出るだろこれ。
キッツい罰ゲームから解放されたところで、揃いも揃って地面に体を投げ出した。
そいつらを横目に、そそくさと体育館横の日陰を狙って少し走る。
定位置を見つけたところで、ひんやりしたコンクリートの壁に背中を預けて、たった一人天を仰いだ。
……Aに会いてぇ。
顔見て、それからアイツの頭をわしゃわしゃ撫でて。それで、困ったAの頬に軽く口づけたり…とか。
きっとAはすぐに照れる。そこに追い討ちをかけるように、らしくねぇ言葉をたくさん降らせてさらに困らせたい…とか。
たった今終わった試合の反省はそこそこに、そんなことばかり考えてしまう。
あれ、俺、本当にどうかしてる。
目を瞑ると、真っ暗になった視界の先に、Aの笑顔が見えた気がした。
もはや幻覚まで愛おしい。
Aの全てが愛おしくて好きで好きでたまらない。
君に触れて、やわらかな愛情をこの手で確かめたい。
そして俺は飽きもせず、そのぬくもりを恋い慕う。
なぜかこのタイミングで、とめどなく溢れてくる想いをグッと堪えるように、めちゃくちゃ歯を食いしばった。
じゃないと、公然と愛してるとか叫んでしまいそうだったから。
そのとき、誰かが俺の頬をつついた。
「……飛雄くん。お疲れさま」
「えっ、ああ、Aか」
壮絶な歯食いしばりタイム。それから、唐突な“飛雄くん”呼びに、ハッと目を開けた。
黙ったままその瞳を見つめた。その、たった3秒くらいの時間が永遠に感じられた。
「周りに誰もいないから呼んでみたんだけど。ダメだった?」
眉を八の字にして首を傾げるA。
“良すぎる”と言いたいところを飲み込んで、『ダメじゃねぇ』と返すと、Aは笑った。
それすら、末期の俺にとっては十分な着火剤だ。
やけに火照る体は、自分のじゃないみたいでふわふわする。
心臓が死ぬほど痛ぇ。
「次は勝てるといいよね。坂道ダッシュほんとキツそうだもん」
「キッツいぞ。Aも一緒に走るか?」
「やだよ」
「ふっ、だろうな。あぁ、そういえば、一人でドリンク作ってたのか?」
「えっ、ああ…、…うん。まあそんな感じ」
その返事が、何かを濁したように聞こえたのは、たぶん気のせいだろう。
暑いし、Aも疲れてるよな。そうだよな。
267人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
pomme(プロフ) - riさん» ありがとうございます〜!!🫶🏻 (2022年5月21日 16時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
ri(プロフ) - 最高でした〜〜🥲💗💗💗 (2022年5月21日 10時) (レス) @page50 id: d86ac26d68 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 黒猫。さん» いつもありがとうございます!!!黒猫さんの熱超ヤバいし、嬉しすぎるし、ありがたいしで狂っちゃう!もうほんと、マジありがとうございます🫶🏻🫶🏻頑張ります〜! (2022年5月6日 20時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
黒猫。(プロフ) - うわああああ!!…わあ。語彙力吹っ飛びました!!もう!好き!コメ欄が黒猫ばっかになってすみません本当に!愛が溢れてまう…!!とりあえず主様を神と崇めさせていただいてよろしいでしょうか!!かっ…げやまぁ!!完結まで応援しますわ…影山との恋の行方を見届けます! (2022年5月5日 20時) (レス) @page42 id: abf8c53ec1 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 黒猫。さん» ありがとうございます!!!嬉しすぎて、もう泣いちゃう!!素敵なありがたすぎるお言葉、何度も読み返してニンマリしてます……🫶🏻いい夢見れそう… (2022年4月11日 23時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:pomme | 作成日時:2022年1月20日 23時