第61話 溶け込もう ページ12
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鵜飼コーチによる、謎の気遣い、よく考えたらとっても恥ずかしくない……?と、歩きながらふと思った。
休みがないから二人で出かけたりはできないけど、ちゃんと二人の時間は作ってやるからな的な。
ね、そんな感じしない?
“上手くやれよ”とかさ、もうそういう意味だとしか思えないよ。
影山くんはどう思ってるのかな。
そう思い、『ねぇ』と声をかけると、影山くんはワンテンポ遅れて返事をした。
コーチの発言より、断然そっちの方が気になって、『大丈夫?どうしたの』と首を傾げて顔を覗き込む。
「あ、いや…、私服で学校って入れんのかなって思って」
影山くんはそう言い、私の服装を今一度頭の先から順に眺めた。
つられて、自分が着てる服に目をやる。
どうやっても制服には見えない、精一杯のおしゃれ着。
やっちゃった……と、頭を抱えた。
急いでたから、そのまま来たんだった。
というか、学校行く流れになるとは思わなくて…。
「……アウトっぽいよねぇ」
ぽつりとこぼすと、影山くんが『いや』と一呼吸置いた。
「俺のジャージ上から羽織ったらいけんじゃねぇか?」
「ジャージ持ってるの?夏なのに」
「部室に念のため置いてあるやつがある。それ、上だけ着てバレねぇように走っていけば……」
「ね、ねぇ、でもそこまでしなくても…」
そう言いかけると、影山くんはふわりと柔らかい笑みを浮かべながら、私の頭の上に手を置いた。
「こんなチャンス無駄にしたくねぇ。Aと一対一で練習できることなんて、この先無いかもしれないからな」
「……そんなこと言われたら断れないじゃん」
「じゃあ、決まりだな。すぐ取ってくるから、ゆっくり来い」
猛スピードで駆けてく背中をぼんやり見つめた。
影山くんって、ときどきすごく大胆になるよね。
私のために何かしてくれること、ドキドキする言葉をたくさんくれること、それは私にとって、この上ない幸せだ。
泣きたくなるくらい嬉しくて、それなのに、胸の奥がぎゅっとして苦しくなる。
そして同じくらい愛おしさがふわぁってとめどなく溢れて、どうしようもなくなる。
好きだなあって思う。
だけど伝えるのはちょっと恥ずかしくて、すぐに誤魔化しちゃう。
影山くんはいつも真っ直ぐに伝えてくれるのに。
今日こそ恥ずかしがらずに、ちゃんと伝えられるかな。
そんなことを考えながら、ゆーっくり地面を踏み締めた。
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pomme(プロフ) - riさん» ありがとうございます〜!!🫶🏻 (2022年5月21日 16時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
ri(プロフ) - 最高でした〜〜🥲💗💗💗 (2022年5月21日 10時) (レス) @page50 id: d86ac26d68 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 黒猫。さん» いつもありがとうございます!!!黒猫さんの熱超ヤバいし、嬉しすぎるし、ありがたいしで狂っちゃう!もうほんと、マジありがとうございます🫶🏻🫶🏻頑張ります〜! (2022年5月6日 20時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
黒猫。(プロフ) - うわああああ!!…わあ。語彙力吹っ飛びました!!もう!好き!コメ欄が黒猫ばっかになってすみません本当に!愛が溢れてまう…!!とりあえず主様を神と崇めさせていただいてよろしいでしょうか!!かっ…げやまぁ!!完結まで応援しますわ…影山との恋の行方を見届けます! (2022年5月5日 20時) (レス) @page42 id: abf8c53ec1 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 黒猫。さん» ありがとうございます!!!嬉しすぎて、もう泣いちゃう!!素敵なありがたすぎるお言葉、何度も読み返してニンマリしてます……🫶🏻いい夢見れそう… (2022年4月11日 23時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pomme | 作成日時:2022年1月20日 23時