第55話 仏頂面破顔 ページ6
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「皆さん、お疲れさまでした。明日はお伝えしてたとおり、体育館に点検作業が入るので、部活はおやすみです」
日が傾き始めた蒸し暑い夕暮れ。武田先生の柔らかな声が湿った空気に溶け出した。
あ、そっか。
おやすみかぁ。
嬉しい。てか、何しよ。
そういえば、バレー部に入ってからまともに休んだのって数えるほどしかない気がする。
そんなことを考えていると、武田先生と不意に目が合った。
「ここのところ休みなしでしたので、ゆっくり休んでください」
武田先生はそう言いながら、明らかに私の方を見て、ニコリと笑った。
解散した後、何で私の方だけ見てたのか尋ねたら、『Aさんが一番休みたそうだったから』って言われた。
どういう意味ですか、先生。
まあ、いいや。
それより本題。片づけ手伝わなきゃ。私は潔子さんの犬だからね。
よし、と気合を入れたそのとき、余所行きの影山くんが『A』と、私の肩を叩いた。
「練習付き合ってくんねぇか」
「んー、ごめん。私、潔子さんのお手伝いしなきゃなの」
「あぁ、そうか」
「早く終わったら顔出すね」
そう返すと、途端に影山くんの表情が綻んだ。
何その可愛い反応。ひょっとして……、影山くんって私のこと超好きなの?
ね、そういうことだよね。
絶対そうだよね。
私以外にそんな顔しないもんね。
とか思って、内心ほくほくした。
『笑ってんじゃねぇ』と言う、影山くんの言葉は右から左に聞き流した。
「Aちゃ〜ん、こっちこっち」
「は〜い!今行きますー!」
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ようやく一仕事終え、潔子さんとさよならした。
この時間でもまだ虫がいっぱい鳴いてるの怖すぎる。
ググッと伸びをして、彼の待つ体育館に向かう。
その途中で、ものすごい形相をした仁花ちゃんが『たすけて!しぬ!しぬ!』と、縋り付いてきた。
「えっ、なに?どうしたの?」
仁花ちゃんの両肩に手を置いて、落ち着くように促す。
「あ、あのね、日向と影山くんが……!」
「ま、待って、誰か先輩呼ぼう?あ、田中先輩!きてください!」
「ん〜どうした?」
仁花ちゃんが、アワアワしながら、私たちに事情を説明する。
全部聞く前に、血相を変えた田中先輩が体育館へと駆け出した。
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pomme(プロフ) - riさん» ありがとうございます〜!!🫶🏻 (2022年5月21日 16時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
ri(プロフ) - 最高でした〜〜🥲💗💗💗 (2022年5月21日 10時) (レス) @page50 id: d86ac26d68 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 黒猫。さん» いつもありがとうございます!!!黒猫さんの熱超ヤバいし、嬉しすぎるし、ありがたいしで狂っちゃう!もうほんと、マジありがとうございます🫶🏻🫶🏻頑張ります〜! (2022年5月6日 20時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
黒猫。(プロフ) - うわああああ!!…わあ。語彙力吹っ飛びました!!もう!好き!コメ欄が黒猫ばっかになってすみません本当に!愛が溢れてまう…!!とりあえず主様を神と崇めさせていただいてよろしいでしょうか!!かっ…げやまぁ!!完結まで応援しますわ…影山との恋の行方を見届けます! (2022年5月5日 20時) (レス) @page42 id: abf8c53ec1 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 黒猫。さん» ありがとうございます!!!嬉しすぎて、もう泣いちゃう!!素敵なありがたすぎるお言葉、何度も読み返してニンマリしてます……🫶🏻いい夢見れそう… (2022年4月11日 23時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pomme | 作成日時:2022年1月20日 23時