第73話 そういう目 ページ24
.
影山くんのせいで、変な感じで見ちゃう。
でもさ、私思うんだけど、黒尾さんは絶対そういうんじゃない。
そもそもそうだとして、何で私ってなるよね。
私である必要ないし。
黒尾さんなら、とっくにステキなお相手捕まえてると思わない?
「まだ休憩時間余裕あるから手伝うよ。Aちゃん一人じゃ大変だろ?」
「ええ、ホントですか?」
「あぁ。ほら、貸して。俺こういうの超好きだから」
ボケっとしてる間に、黒尾さんは、私の手から強引にスポンジを奪い取った。
そして、『まあ、見てなさいよ』と、得意気に口角をクイっと上げた。
“超好き”の言葉通り、私の何倍ものスピードでボトルがあわあわになって、それからピッカピカになっていった。ほんとうに魔法みたいに。
「黒尾さん、もしかして天才…?」
「何、今さら気づいた?」
ククっと、黒尾さんが手の甲で口元を覆いながら、小さく笑う。つられて笑うと、一層楽しそうに声を上げた。
ねぇ、影山くん。
やっぱり、考えすぎなんじゃないの?
とっても優しくて、とっても面倒見の良いお兄さんにしか見えないけど。
そんな風に思いながら、隣に目をやる。
黒尾さんは、相変わらず楽しそうに鼻歌を歌いながら、ざぶざぶと流れる水の中で器用に手を動かしていた。
「Aちゃん、それ取ってくれる?」
「あ、はい」
黒尾さんがタオルを顎で指す。
それを渡したとき、不意に黒尾さんの手と触れ合った。
慌てて引っ込めようとしたその手を、黒尾さんがギュっと掴む。
びっくりして、勢いよく顔を上げた。
「あ…の、…手……」
すると彼は、タオルごと私の手を握ったまま、『やだ』と、意地悪な表情で私を見下ろした。
「……なんで…?」
「ぷっ…本当に鈍感だよね、Aちゃんは。これでもまだ、わからないかな」
そう言うとすぐに、ぐいっと私の手を引いて、胸元に抱き寄せるみたいにした。
大人っぽくて、艶やかな笑みを浮かべながら。
そんな表情で真っ直ぐに見つめられると、嫌でも胸が高鳴った。
身体中が熱い。
認めたくないのに、頬が火照る。
抵抗しようにも、心の柔らかい部分は、簡単に揺らいだ。
ドキドキしてるなんて、思われたくない。
動揺してるの、悟られたくない。
「…冗談はやめてください」
そう言って一歩下がると、ひどく真剣な声が返ってきた。
「冗談な訳ないから」
267人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
pomme(プロフ) - riさん» ありがとうございます〜!!🫶🏻 (2022年5月21日 16時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
ri(プロフ) - 最高でした〜〜🥲💗💗💗 (2022年5月21日 10時) (レス) @page50 id: d86ac26d68 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 黒猫。さん» いつもありがとうございます!!!黒猫さんの熱超ヤバいし、嬉しすぎるし、ありがたいしで狂っちゃう!もうほんと、マジありがとうございます🫶🏻🫶🏻頑張ります〜! (2022年5月6日 20時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
黒猫。(プロフ) - うわああああ!!…わあ。語彙力吹っ飛びました!!もう!好き!コメ欄が黒猫ばっかになってすみません本当に!愛が溢れてまう…!!とりあえず主様を神と崇めさせていただいてよろしいでしょうか!!かっ…げやまぁ!!完結まで応援しますわ…影山との恋の行方を見届けます! (2022年5月5日 20時) (レス) @page42 id: abf8c53ec1 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 黒猫。さん» ありがとうございます!!!嬉しすぎて、もう泣いちゃう!!素敵なありがたすぎるお言葉、何度も読み返してニンマリしてます……🫶🏻いい夢見れそう… (2022年4月11日 23時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:pomme | 作成日時:2022年1月20日 23時