第58話 落ち着き ページ8
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偶然、同じカフェが行きつけだと判明し、海くんとカフェトークを展開しています。
海くんって、落ち着いていて、大人っぽい。
それに、私より5個くらい歳上って言われても納得するくらいの包容力。
だからなのか、何でも話せちゃうなぁと思ってペラペラ喋ってた視線の先に、はしゃぐ彼らの影が見えた。
「んねぇ、海くん。あの二人って、いつもあれ?」
「いや、そんなことはないけどなぁ」
楽しげにはしゃぐ二人を見つめる海くんの目には、かなりの父性が宿ってる。
私も含めて、あなたたち、ほんとに同い年だよね?と、吹き出しそうになった。
「嬉しいんじゃないかな、Aが来てくれて」
「ほんとかなぁ」
「前のマネージャーといろいろあった…みたいな、余計な心配事も無くなった。それに、Aなら、すぐに頼り甲斐のあるマネージャーになりそうだしな」
「そ、そうかなぁ」
海くんの嘘のない真っ直ぐな視線に、ドギマギした。
「期待してるよ」
屈託のない態度。
意外と、そういうのにけっこう弱いかも。
次第に頬が熱くなっていくのを感じて、慌てて目を逸らした。
海くんの視線から逃れるため、『だってさ〜、黒尾くん』なんて、はしゃぐ彼に同意を求める。
すると、それに気づいた黒尾くんが、頭の上にハテナを浮かべながら、近づいてきた。
わっ、来ちゃった…と、漏らした声が聞こえたのか、黒尾くんの顔が楽しそうに少し歪む。
「なに、俺の陰口でも叩いてた?」
そして、ずいっと体を曲げて私の顔を上から覗き込むようにすると、ニヤリと口の端を上げた。
思いの外、近い距離にある、整った君の顔。
いくら見慣れてるとはいえ、やっぱりいつだってドキドキしちゃう。
いまだに、ね。
「ちょっと、いろいろね…」
『ね、海くん』と、同意を求めても、当の海くんはふわふわと目を細めてる。
なにその菩薩みたいな顔。
困ってると、黒尾くんが私の頭に手を置いて、くしゃりと撫でた。
「俺に見惚れてないで、片付けに集中しましょーね」
クスリと笑う見慣れた顔。
それだけできゅっと痛む私の心臓。
ずるいよなぁ、黒尾くんは。
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作者名:pomme | 作成日時:2024年2月25日 22時