第57話 したり顔 ページ7
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「………ククッ…フハッ……アハハッ」
「は…………?」
頬を染めたかと思えば、突然笑い出した夜久。
それに、情け無いくらいたじたじしてしまう、俺。
やっくん、情緒どうした。
もはや、海とAの様子を伺うどころの騒ぎではないし、他の部員の注目まで集めちゃってるよ、俺ら。
「やっぱおもしれーな、お前」
俺の当惑を見破るように、夜久がフハハと笑って俺の肩をぐわっと掴む。
「や、夜久さん、俺、全然何にも飲み込めてないんだけど」
「かわいーな、そういうとこもな。それが黒尾のあざとさなんだよな。うんうん」
わけのわからないことを喋り、夜久はクフフと嬉しそうに笑う。
側から見たらかなり異常。
汗だくの男子高校生が肩組んで仲良くはしゃぐって、むさ苦しさしかないだろうよ。
「嘘だよ、嘘」
「……嘘?…どれ?」
夜久と目が合う。すると夜久は、視線をクイっと動かして、Aの方をチラリと見た。
「えっ、さっきの?」
「黒尾、どんな反応すっかなーって、一つ芝居を打てみたけど、どう?様になってた?」
……バカか、やっくん。
様になるどころか、一瞬心臓止まりました。
てか、演技で頬までピンクにできんの、才能の塊でしかない。
ニマニマと、したり顔でニヤつく夜久へ、『意味不明な遊びすんのヤメロ』と釘を刺す。
「だっておかしいと思ってさ」
「何がだよ」
「お前の元カノが辞めて、次に連れてきた子と異様に仲良くしてる。これって、何もない方がおかしくない?ってさ。しかも、相手Aだよ。あの、A」
「“あの”って何だよ。悪いか、A誘って」
「ふっ、まあいいや。けど、俺は悪くないと思うよ」
「ん?」
「元カノと別れて、速攻で別の子にロックオンすんのも」
「よ、余計なお世話ですー」
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作者名:pomme | 作成日時:2024年2月25日 22時