第６６話 いざ参る ページ16
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客が詰めかけるメインゲートが見えた途端、『鉄くん、早く早く』とAが俺を振り返って笑った。
テーマパーク独特の静かな熱気。
まぁ、そう焦んなって。
どうやっても入れんだから。
そう言いたいのを飲み込んで、笑いかける。
すると、彼女は小走りで俺の前に立ち、俯きがちにそっと手を差し出した。
「あの、鉄くん」
「ん？」
「はぐれないように、手、握っててくれない？」
Aの頬が、薄桃色に染まる。
照れ屋な君の、精一杯のお願い。
そんなの、断るはずがないでしょうよ。
「もちろんです。お姫さま」
彼女の手に指を絡めて、その手の甲に口付けを落とす。
「わっ、ちょっと」
「Aが可愛いこと言うから悪いんだろ？」
そう言うと、Aは黙った。
お察しのとおり、耳まで真っ赤です。かーわいい。
「A、チケットアプリ、ちゃんと開いてる？」
「開いてます」
「おっ、優秀」
パーク内へ、じわりじわりと近づく。
何に乗ろうか。何食べようか。結構混んでるね。なんて、他愛もない会話をしていると、ようやく俺たちの番が来た。
こんなに待ったのに、あっさり入場できんのかよ…的な愚痴は、超野暮なので心の中にしまっておく。
「さぁ、鉄くん。まずは被りものを買いましょう」
「被りもの？カチューシャじゃねーの？」
「一応、私たち、ナイショのデートだからね。そのツンツン、隠しとかなきゃ」
一生懸命に俺の頭に手を伸ばすのに、届かなくて、照れたように笑うA。
「不本意？」
「そりゃねぇ、俺のチャームポイントだもん」
「寝癖はチャームポイントって言わないの。鉄くんのほんとのチャームポイントは、そのかっこいいお顔と飛び抜けた身長だよ」
「あら、ありがと」
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作者名：pomme | 作成日時：2024年2月25日 22時
