検索窓
今日:48 hit、昨日:85 hit、合計:23,162 hit

第65話 初デート ページ15






初デート。

その、甘美でくすぐったい響きに、頬が緩む。



いつもより可愛いって思われたいし、そう言われたい。

リップを指でぼかしながら、鏡の向こうの自分に目配せした。






待ち合わせ場所に着いたのは、予定の20分も前。


さすがに気合い入りすぎかな…。

急に恥ずかしくなって、心の中で自嘲気味に笑った。


おろしたての洋服は、まだ馴染んでいないからか、私だけ浮いてるようにも思えてくる。

意味もなくホコリを払った。


スマホを見ても、さっきからまだ1分しか経ってない。


内カメにして、前髪を整えて、ほんの少しだけ口角を上げてみる。

笑顔の練習……って、側から見たら確実に不審者。



鉄くん早く来て〜。時間前だけどさ。






顔を上げた丁度そのときだった。


『わりぃ、お待たせ。てか、早』と、照れたように笑う君の姿が目に入った。






「ご、ごめんね。何かソワソワしちゃって」


「奇遇ね。俺も超ソワソワしてたし、実はAよりずーっと前に着いててさ」


『あそこから見てた』と、鉄くんが柱の影を指差す。


「すぐ来てくれたらよかったのに」


「……あのなぁ、Aさん。彼女が俺のこと待ってる瞬間、これがなかなかキュンとすんのよ。おわかり?」


「わかんない」


「わかってよ」


鉄くんがさりげなく手を握って、私を見下ろし、クスリと笑う。


「さ、行きますか」


「う…うん」


視線を交わす。それだけで、トクリと胸が甘く高鳴った。



「電車で1時間って、意外と近いよな」


「東京は便利だね〜」


「ふっ、何言ってんの今更」



鉄くんに手を引かれるがまま、行き交う人の隙間を縫うように、器用に歩く。



それで、とりあえずわかったことが一つある。

私服の鉄くんは心臓に悪いってこと。

たった一つ。ただそれだけ。

第66話 いざ参る→←第64話 ご予定は



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (113 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
836人がお気に入り
設定タグ:黒尾鉄朗 , ハイキュー
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:pomme | 作成日時:2024年2月25日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。