黒尾くんのセオリー【黒尾鉄朗】 (ページ6)

今日:104 hit、昨日:146 hit、合計:137,603 hit

第０６話　彼とキミページ6

．

黒尾くんに彼女がいるように、私にも数ヶ月前から付き合っている彼氏がいる。

剣道部。

主将とかではない、ノーマルな部員の一人。

馴れ初めは特にない。

あまり記憶にないけれど、成り行きでそういう関係になってしまった。

“なってしまった”というと、彼のことが嫌いみたいだけど、そうではない。

彼は私のことを気遣ってくれるし、ほどよい距離感で接してくれる。

それなりにかっこいいし、清潔感もある。

ちゃんと、好きだ。

たぶん。誓って。

性格は黒尾くんとは正反対の、堅物で、真面目を体現したような人。

だから、黒尾くんと接すると少々困惑する。

会話ってこんなに雑で良いんだっけとか。

こんなに自由に振る舞って良いんだっけとか。

．

レモネード事件(初めてのまともな会話)から早３週間。

あれから私たちは、きちんとした会話を交わすようになった。

何の話をしてるかについては、全く覚えていない。

覚えていないけど、成長だ。

そんな頃おとずれた、今季１回目の席替え。

教卓の上のボックスから、数字の書いてある紙を取り出し、そこに書いてある場所に移動するだけのシンプルな行為。

それなのにどうして、こんなにも毎回ドキドキワクワクするのだろう。

私たちは浮き足立っていた。

ただ一人、黒尾くんを除いて。