第43話 初めから ページ43
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「さて、どこから話そうか」
そう言って、君は眉間にシワを寄せる。
「けっこう遡るけど、いい?」
その声に、私は静かに頷いた。
ゆっくりと足を進めると、そこにはトンネルのような水槽が待ち受けていた。
透明な隔たりに沿って、大きなエイがまるで空を飛ぶように、悠々と泳いでいる。
うわぁと、二人同時に声を上げた。
「高3に上がるちょっと前、アイツに告白されてさ。
『最後の思い出に。ほんのちょっとの期間でいいから。例えば、2ヶ月とか。お願い』って。
で、アイツはマネージャーだし、俺は主将。てことでさ、断るのも気まずいから何となくOKした。俺とアイツの関係はそんな感じ」
黒尾くんの話を聞きながら、水槽の下の方にいたびくともしない小さなサメを、アクリル越しにトントンと指で撫でた。
「…てことは、好きじゃなかったんだ」
「言いにくいけど、まあ、その通りだな」
「……じゃあ、あのキスは?」
「まあ、待ってって。話はまだまだこれからだから。で、まあ、その後俺らは3年になった。別々のクラスで、俺的にはほっとした。あと1ヶ月と少しなんて、正直大したことないって思った。……けど、思わぬ誤算発生」
「何?誤算って」
小さなサメから、黒尾くんへ視線を移すと、唐突に頭のてっぺんにキスされた。
驚いて触れられたところに手を伸ばす私に、黒尾くんが笑いかける。
「3年に上がって早々、俺の目の前の席にAがいたこと」
「それがどうしたの」
「恥を忍んで打ち明けますが……」
黒尾くんが私の髪に手を伸ばし、くるりと一束指に絡めた。
「……そんな状況なのにさ、俺、惚れちゃったワケ。……Aに。ね?」
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pomme(プロフ) - 処刑人さん» ありがとうございます🫶🏻🧚🏻♀️🫶🏻 (2月24日 11時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
処刑人 - ちゅき♡ (2月24日 1時) (レス) @page48 id: 7578fd3293 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - かおりさん» ありがとうございます🙏🏻🥳 (12月25日 19時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
かおり(プロフ) - きゅんきゅんします💕続き楽しみにしております✨ (12月25日 5時) (レス) @page44 id: bad28e8810 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pomme | 作成日時:2023年8月7日 23時