第41話 相思相愛 ページ41
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ドキンと胸が鳴る。
「今の、何」
かすれた声で尋ねた。
すると黒尾くんは、やれやれと肩をすくめて小さく笑った。
「見ての通り。俺も別れた」
意味不明とかいう段階は、とっくに超えてる。
『お互い、フリーってことだよな』と、黒尾くんは私を見下ろす。
彼が考えてることは相変わらずわからないし、今見たことも、この状況も、何もかも全てが半端な状態で飲み込めていないのに。
黒尾くんが手を離す代わりに、私の頬を両手で包んで、ふわりと目を細めたときから、私の瞳には涙が少しずつ溜まっていた。
君が親指で私の頬を、そっと撫でる。
まるで、宝物に触れるような、柔らかな手つきで。
触れられた感覚が、頬を伝って、胸の奥を静かに泡立たせた。
ああ、もう。わけがわからない。
たすけて。
黒尾くん。
私、しんじゃうかも。
『黒…尾、くん』と、途切れ途切れに彼の名前を呼んだ。
そうすると、黒尾くんは微笑みをこぼした。
「好きだ、A」
黒尾くんの真っ直ぐな声が、耳に届く。
涙で視界がぼやけていても、それだけは確かだった。
この世で一番優しくて、この世で一番あたたかい彼の声は、私の耳に容易く染み込んで、ふわふわと漂った。
堪えていた涙が一滴、頬を伝う。
黒尾くんはその涙を親指で拭い、唇にそっとキスを落とした。
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pomme(プロフ) - 処刑人さん» ありがとうございます🫶🏻🧚🏻♀️🫶🏻 (2月24日 11時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
処刑人 - ちゅき♡ (2月24日 1時) (レス) @page48 id: 7578fd3293 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - かおりさん» ありがとうございます🙏🏻🥳 (12月25日 19時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
かおり(プロフ) - きゅんきゅんします💕続き楽しみにしております✨ (12月25日 5時) (レス) @page44 id: bad28e8810 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pomme | 作成日時:2023年8月7日 23時