第40話 重なる手 ページ40
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立ち尽くす黒尾くんと私。
その間に、何とも形容し難い妙な空気が流れる。
私は、ようやく力の抜けた足を踏み出して、よろよろと黒尾くんの前に歩み寄った。
『だ、大丈夫…?』と、震える手で黒尾くんの頬に手を伸ばそうとしたけれど、すんでのところで手を止めた。
あ、危ない。触れるだなんて。
なのに、黒尾くんは私の手をそっと上から包んで、自分の頬に触れるように仕向けた。
ぶわっと、途端に顔に熱が集まる。
な、何、この状況。
頭の中で問うても、目の前の黒尾くんが答えてくれるはずはない。
私は、黒尾くんの手によって、自分の冷えた手のひらが彼の熱を持った頬にピタリとあてられるのを、ただじっと見ていた。
黒尾くんの大きな手は、予想外に温かかった。
ドキドキして、身体がギクシャクして、もう、変になりそうだった。
「……痛そう…」
やっと発した言葉はただそれだけで、何の意味も成していなかったけれど、黒尾くんはなぜか嬉しそうに目を細めた。
『痛え。…マジ、超痛い』と笑いながら、私の手を包む手に力を込めた。
私の胸はまたひとつ、甘く切なく疼いた。
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pomme(プロフ) - 処刑人さん» ありがとうございます🫶🏻🧚🏻♀️🫶🏻 (2月24日 11時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
処刑人 - ちゅき♡ (2月24日 1時) (レス) @page48 id: 7578fd3293 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - かおりさん» ありがとうございます🙏🏻🥳 (12月25日 19時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
かおり(プロフ) - きゅんきゅんします💕続き楽しみにしております✨ (12月25日 5時) (レス) @page44 id: bad28e8810 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pomme | 作成日時:2023年8月7日 23時