第37話 うやむや ページ37
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毎年来ているのに、水族館は新鮮におもしろかった。
日本海の魚から始まり、今度は太平洋の魚が展示されている。
魚について、私は全くと言っていいほど知識を持ち合わせていないけれど、きらきらと光る鱗の美しさや、なめらかな泳ぎの軌道に、目を奪われた。
小さな命がうごめく様子を、飽き足らずに眺めていた。
そのとき、視線の端に、あの人の姿が見えた。
少し前に振られた、元彼。
黒尾くんには結局まだ伝えられていない、あの日の出来事が、脳裏をかすめる。
無意識に視線が彼に向かった。そして私の目は、その隣に寄り添うようにして立つ女子生徒を捉えた。
彼を愛おしそうに見つめるその横顔から、二人の関係を察した。
私がうだうだしている隙に、もう新しいスタート切っちゃってんだ。
それが、自分でも予想外なくらいショックだった。
彼のことは今さら何とも思わないけれど、黒尾くんへの気持ちをうやむやにしている自分を、責められているように感じて、どうしようもなく辛くなった。
私は逃げるように、『ごめん、ちょっとお手洗い行ってくるね。私のことは気にしないで先行ってて』と、クラスメイトに告げて、踵を返した。
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pomme(プロフ) - 処刑人さん» ありがとうございます🫶🏻🧚🏻♀️🫶🏻 (2月24日 11時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
処刑人 - ちゅき♡ (2月24日 1時) (レス) @page48 id: 7578fd3293 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - かおりさん» ありがとうございます🙏🏻🥳 (12月25日 19時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
かおり(プロフ) - きゅんきゅんします💕続き楽しみにしております✨ (12月25日 5時) (レス) @page44 id: bad28e8810 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pomme | 作成日時:2023年8月7日 23時