第32話 システム ページ32
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黒尾くんの目の前の席で過ごす、3ヶ月目が始まった。
背後に、彼の気配を感じながら、ふと思う。
私の席、またここだけど、席替えって、黒尾くんの裁量でどうにかなるものなのかと。どういう権限なんだと。
昨日も今朝もなぜか全然疑わなかったけど、一度浮かんだ疑問は、授業がどう進もうと、頭の中をぐるぐる回った。
そんなとき、授業の終わりを知らせるチャイムが鳴った。
私はその瞬間、ぐるりと後ろを振り返って、『ねぇ、黒尾くん』と、気だるそうな彼の瞳に視線を送った。
「なぁに、Aさん」
肘をつきながら、黒尾くんが上目遣いに私を見つめる。
そんな仕草にも、簡単にドキドキした。
「席替え、どういう仕組み?何で私の席、ここだって知ってたの」
小声でたたみかけるように尋ねると、黒尾くんはククっと喉の奥で笑った。
「何で笑ってんの」
「別に、何でもねぇよ」
「何でもない人は笑わないの」
『で、理由は?』と、頬を膨らませる。
すると黒尾くんは、人差し指で私の頬をつつきながら目を細めた。
「前の席は宗谷が良いって言ったろ?」
「言ってたけどさ、……どういう権限?」
「Aは知らなくていーの。俺が…」
「“良いって言ってんだから”?」
「ご名答」
「意味不明」
「…でもさ、嫌がんねぇじゃん。A」
「そ、それは……ねぇ…」
不意に頬が熱くなるのを感じて、顔を背けた。
『…黒尾くんはおもしろいし、飽きないから』と、小さく呟く。
「ふっ、そう。光栄だね」
黒尾くんは満足そうに笑って、私の頭に手を伸ばした。
平凡な、私たちの日常が戻ってきたのだと、そのときはそう思った。
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pomme(プロフ) - 処刑人さん» ありがとうございます🫶🏻🧚🏻♀️🫶🏻 (2月24日 11時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
処刑人 - ちゅき♡ (2月24日 1時) (レス) @page48 id: 7578fd3293 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - かおりさん» ありがとうございます🙏🏻🥳 (12月25日 19時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
かおり(プロフ) - きゅんきゅんします💕続き楽しみにしております✨ (12月25日 5時) (レス) @page44 id: bad28e8810 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pomme | 作成日時:2023年8月7日 23時