黒尾くんのセオリー【黒尾鉄朗】 (ページ27)

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第２７話　鉢合わせページ27

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相変わらず涼しげな黒尾くんに目配せして、ようやく立ち上がった。

『正門まで送るから』と、黒尾くんは言う。

その優しさに、また少しドキっとした。

黒尾くんも、私とまだもう少し一緒に居たいとか、そんなこと、考えていたりして。

読めない表情を見上げては、私の心はぐらぐら揺れた。

また、追い討ち。

とっても容易く、とっても静かに、私の心は左右に行ったり来たりして、止めどなく揺らいでる。

そろそろ、ちゃんと決めなきゃ。

頭の中ではよくわかってた。

「やけに手厚いね、今日の黒尾くん」

「そう？いつもと変わんねーよ」

「いつもはもうちょーっと意地悪じゃない？」

「んな、失礼な」

黒尾くんが口の端をクイっと上げる。

あと一歩、いや、0.5歩くらい右にずれたら、手を繋げちゃう。

そんな距離で。

黒尾くんが半歩、私に近づいた、ような気がした。

そのときだった。

向こうから、『あれ？A？』と、聞き慣れた声が私を呼んだ。

「あっ…」

視界に飛び込んで来た、剣道着姿の彼氏。

その姿を見て、ヒヤリと背筋が冷たくなった。

反射的に、黒尾くんの側から離れる。

途端に、黒尾くんと私の間を言いようのない気まずさが覆い、空気が凍った。

ドキドキ、ギシギシと、心臓がおかしなほど脈打つ。

「そんなところで、珍しいね。何してたの」

何の疑問も持っていない、彼氏の表情。

緊張と罪悪感。

いろんな気持ちが渦巻いて、くらくらした。

どうしよう。

そんなとき、戸惑う私の背中に、黒尾くんの大きな手が優しく触れた。

「体育館に忘れもの…したんだよな？」