第25話 視線の先 ページ25
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頭のてっぺんに、黒尾くんの体温が残ってる。
心臓の音がうるさくてうるさくて、黒尾くんに聞こえちゃうんじゃないかと、ヒヤヒヤした。
「も、もう行かなきゃ」
乱れた髪の毛を整えながら、彼の表情を伺う。
すると、『何?そんなに俺と離れたい?』と、黒尾くんは悪戯に微笑んだ。
「そ、そうじゃなくて、……戻んないで、怒られないかなぁって、思った…だけ」
「ほんとに大丈夫だから、心配すんな」
『……それに、話したかったって言っただろ?』と、黒尾くんはいつになく柔らかな声色で付け足す。
ドクンと胸が鳴った。
「話すって、何を」
できるだけ、平静を装って。
今の私にできることは、それだけだった。
ほんのり湿り気を含んだ風が、木々を揺らして、微かに頬を撫でた。
『なぁ、A』と、黒尾くんは私の方を向いて、口を開く。
視線を少し上げると、真っ直ぐで、ちょっとだけ憂を帯びたような目に捉えられた。
じっと、何かを訴えるようなその目に射止められて、私は固まったまま、数回瞬きをした。
ドキドキと、鼓動が速くなっていくのが、手に取るようにわかる。
ねぇ、黒尾くん。
どうしてそんな風に私を見つめるの。
……それじゃあ、まるで───。
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pomme(プロフ) - 処刑人さん» ありがとうございます🫶🏻🧚🏻♀️🫶🏻 (2月24日 11時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
処刑人 - ちゅき♡ (2月24日 1時) (レス) @page48 id: 7578fd3293 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - かおりさん» ありがとうございます🙏🏻🥳 (12月25日 19時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
かおり(プロフ) - きゅんきゅんします💕続き楽しみにしております✨ (12月25日 5時) (レス) @page44 id: bad28e8810 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pomme | 作成日時:2023年8月7日 23時