第22話 話したい ページ22
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そんな私たちを横目に、黒尾くんは『へ〜、ふ〜ん』と、興味無さそうに相槌を打つ。
私の腕の中にある忘れものを指でつついたりしながら。
「……俺も、話したいって思ってた」
そして何を思ったのか、黒尾くんは、わざと私の耳元に顔を近づけてそう囁いた。
『な、何急に』と、慌てて飛び退く。
そんなつもりがなくたって、ドキドキと、心臓は慌ただしく動き出す。
夜久くんと同じセリフなのに。
黒尾くんが言うと妙に色っぽくて、ひとりでに体温が上がった。
「話してるじゃん、いつも」
今日は違ったけど。
「まぁ、たしかに?」
黒尾くんが口の端を上げる。
それについ見惚れてしまった。
席の前後とは違う距離感。隣に並ぶと、背の高さやそのスタイルの良さに、無意識にときめいてしまう自分がいる。
やめなきゃって思っても、勝手に。
不可抗力。
「少なくとも、俺、やっくんよりそう思ってるよ」
「ねぇ、そこ、張り合わなくていいから」
私たちのやり取りを前に、『あの、俺戻っていい…?』と、夜久くんが気まずそうに眉を下げる。
「えっ、あぁ、ごめんね。ありがとう」
「どういたしまして。またいつかゆっくり話そうぜ」
私は頷きながら返事をして、そういえば…と、ふと思い出した。
「……今日は彼女さん、お休み?」
「あぁ、うん、休み。それがどうかした?」
「ううん、別に。何でもない」
黒尾くんがこんな感じだから忘れがちだけど、彼にはお相手がいる。
だから、ほんの少し胸がぎゅっとした。
これも不可抗力。
ほんとに、ほんとだよ。
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pomme(プロフ) - 処刑人さん» ありがとうございます🫶🏻🧚🏻♀️🫶🏻 (2月24日 11時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
処刑人 - ちゅき♡ (2月24日 1時) (レス) @page48 id: 7578fd3293 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - かおりさん» ありがとうございます🙏🏻🥳 (12月25日 19時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
かおり(プロフ) - きゅんきゅんします💕続き楽しみにしております✨ (12月25日 5時) (レス) @page44 id: bad28e8810 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pomme | 作成日時:2023年8月7日 23時