第21話 イヤでも ページ21
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「会いに来たの。黒尾くんに」
「ふっ、嘘つけ」
黒尾くんが俯きがちに笑う。
“嘘つけ”って言う割に、その表情、ほんとに嬉しそうに見える。
私の勘違いじゃなかったら。
調子狂うなぁ。
黒尾くんの表情に、こっちまで照れてしまいそうになりながら、気を取り直して前を向いた。
「ごめん、嘘」
「だろうな。……で、何?本当は」
「忘れもの…しちゃって」
「あぁ、もしかして、タオルと水筒?」
「うん」
「あれ、やっぱAのか」
『やっくん、それ取って』と、黒尾くんが私の忘れものらしきかたまりを指差す。
「よくわかったね、私のだって」
「こんだけ毎日Aのこと見てりゃ、嫌でもわかるよ」
黒尾くんはそう言って、私の頭をくしゃりと撫でた。
「嫌でもは余計だよ」
「んじゃあ、俺の努力ってことで」
「それはそれで怖いかも」
「なら、趣味」
「もっと怖い」
黒尾くんが楽しそうにクスリと笑う。
私も釣られて、笑みをこぼした。
気まずさは、とっくになくなっていた。
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「はい、どうぞ」
「ありがとう」
夜久くんが手渡してくれた忘れものを、大事に抱えた。
夜久くんとは前に同じ塾に通ってたこともあって、何度か話したことがあった。
話すというか、挨拶程度の次元だから、顔見知りって言ったほうが適切かもしれない。
「Aとは話したいって思ってたよ」
夜久くんが言う。
何かちょっと照れくさくて、『実は私も』と曖昧に笑った。
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pomme(プロフ) - 処刑人さん» ありがとうございます🫶🏻🧚🏻♀️🫶🏻 (2月24日 11時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
処刑人 - ちゅき♡ (2月24日 1時) (レス) @page48 id: 7578fd3293 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - かおりさん» ありがとうございます🙏🏻🥳 (12月25日 19時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
かおり(プロフ) - きゅんきゅんします💕続き楽しみにしております✨ (12月25日 5時) (レス) @page44 id: bad28e8810 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pomme | 作成日時:2023年8月7日 23時