第20話 忘れもの ページ20
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厚い扉で隔てられていても、キュッキュッと甲高く響く、シューズの音がよく聞こえた。
忘れものを取りに来ただけだから。
そう、何度も何度も念じながら、重たい扉をこじ開けた。
「お邪魔…しまぁす……」
恐る恐る足を踏み入れ顔を上げると、そこには、いつもより数億倍くらい楽しそうに飛び回る黒尾くんがいた。
飛び回るって表現が正しいのかはわからないけれど、私の目にはそう映った。
「いいねぇ、ナイスサーブ」
飛んでくるサーブを軽く受け止めながら、黒尾くんは次から次へとアドバイスや指示を出す。
思わず、『別人?』って声出た。
ほんとに、それくらい、私にとってはおかしな瞬間だった。
中断するのも申し訳ないから、そのままじっと黒尾くんを見ていると、ようやく私に気づいてくれた。
『ん…?はぁ?えっ、A?』と、らしくないほど慌てながら、小走りでこちらに向かってくる。
「何、どうした」
私がここにいる驚きで、約半日の気まずさとか吹き飛んじゃったのか、黒尾くんは真っ直ぐに私を見つめて言った。
それだけで、ドクンと胸が鳴って、頬が火照る。
それは、もう、病気みたいに。
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pomme(プロフ) - 処刑人さん» ありがとうございます🫶🏻🧚🏻♀️🫶🏻 (2月24日 11時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
処刑人 - ちゅき♡ (2月24日 1時) (レス) @page48 id: 7578fd3293 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - かおりさん» ありがとうございます🙏🏻🥳 (12月25日 19時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
かおり(プロフ) - きゅんきゅんします💕続き楽しみにしております✨ (12月25日 5時) (レス) @page44 id: bad28e8810 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pomme | 作成日時:2023年8月7日 23時