第18話 隠す本音 ページ18
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黒尾くんの柔らかな笑みが、まぶたの裏に焼きつく。
そんな顔、私に見せちゃダメなのに。
黒尾くんを前にすると無意識に瞳が揺れるその仕組み。
勝手に鼓動が高鳴るその仕組み。
確かに感じる違和感を、見て見ぬ振りしちゃう、私の弱さと不甲斐なさ。
認めるのは怖いし、一歩踏み出す勇気なんてなかった。
他力本願。
黒尾くんがどうにかしてくれないかなって、そんな恥ずかしい頼みごと、もちろん言えない。
私を見つめる目が、ときどき熱を帯びていたり、優しすぎたりすることは、気のせいじゃないって、思いたかった。
閉じ込めるべき、厄介な自惚れ。
胸の奥がぎゅうっと疼いた。
「……そういえば、2ヶ月間ありがとな」
「えっ、ああ、こちらこそ。さすがに3ヶ月連続は無いかなぁ」
「どうだろ」
「黒尾くんもそろそろ飽きてきたところでしょ?」
すると彼は、ううんと首を振り肘をついた。
「飽きるどころか……」
黒尾くんは一呼吸置き、私を真っ直ぐに見つめる。
「何」
そう尋ねる声が少し震えた。
尋ねた先にある答えが、黒尾くんの本当の気持ち。
それで全て、私たちの関係は決まってしまう。
そんな気がした。
ドクンドクンと、心臓が嫌に激しい音を鳴らす。
微かな期待と、同じくらいの恐怖が胸を占め、息が詰まった。
けど、私の耳に届いたのは、『……ごめん、やっぱ何でもない』と、気まずそうにする彼の声だけだった。
「なぁに、それ」
わざとらしく目を逸らす。
それ以上何も言えないまま、私は、窓の向こうの景色に夢中になるフリをした。
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pomme(プロフ) - 処刑人さん» ありがとうございます🫶🏻🧚🏻♀️🫶🏻 (2月24日 11時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
処刑人 - ちゅき♡ (2月24日 1時) (レス) @page48 id: 7578fd3293 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - かおりさん» ありがとうございます🙏🏻🥳 (12月25日 19時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
かおり(プロフ) - きゅんきゅんします💕続き楽しみにしております✨ (12月25日 5時) (レス) @page44 id: bad28e8810 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pomme | 作成日時:2023年8月7日 23時