黒尾くんのセオリー【黒尾鉄朗】 (ページ16)

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第１６話　いつでもページ16

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罪悪感。

自分に対する、嫌悪感。

黒尾くんの理論に従っても、それらは静かに私の周りを漂って、黒尾くんと接すれば接するほど、日に日にその色は濃くなった。

まともに取り合わないように、余分な気持ちを持たないように。そう、心のどこかで言い聞かせる。

それでもなお、私の胸は、ちょっとした弾みで簡単に高鳴って、終いには、彼の意地悪な笑みを欲した。

全然良くない。

ほんとに、良くないんだけど。

ねぇ、黒尾くん。

あなたなら、良いって言って、飲み込んでくれるの？

「…………、……A」

肩を叩かれ、ハッとして後ろを振り向くと、神妙な面持ちの黒尾くんが私を見ていた。

「えっ、あぁ、ごめん。ぼーっとしてた」

「…大丈夫か？」

ドクンと胸が軋む。

『大丈夫。最近、妙に眠くって』と、視線を逸らした。

黒尾くんはふーんと腑に落ちてない表情で肘をつき、また私を見つめる。

「心配…だね」

「……黒尾くんが…？私のことを……？」

「悪い？」

「う、嬉しいけど、黒尾くんなら、『んなもん飯食って運動すりゃ解決すんだろ』とか、言いそうだから」

「ふっ、心外だねぇ。俺はこんなにも心配してんのにさ……」

黒尾くんは私好みのいつもの笑みを浮かべ、指先で私の髪に軽く触れる。

それから、『Aが元気じゃないと、俺の体調が悪くなるんでね』と、悪戯に微笑んだ。

「そんなの、初めて聞いた」

「今、初めて言った」

「…絶対てきとーに言ってるよね」

「マジなんだけどなぁ。……俺はいつでも本気だって、よく知ってんでしょ？Aちゃんも」

黒尾くんがニヤリと笑う。

あ、今、Aちゃんって。

「さ、授業始まるってよ。前向こうか」

黒尾くんは少し恥ずかしそうにしながら、私の肩をぐいぐい押して遮った。

あぁ、もう。

困る。

ほんとに。

ねぇ、黒尾くん。

どうしてくれるの。