黒尾くんのセオリー【黒尾鉄朗】

第１５話　持て余す ページ15

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「なぁ、A」


「ん？」


「何でもない」


「黒尾くん。何でもないなら、話しかけないんだよ、普通は。知ってる？」


「知ってる」


「何なの、もう」


「持て余してんのよ、暇を。退屈な俺に付き合ってくださいよ、Aさん」


「気が向いたら」


「ふっ、その気はいつ向くんですか」


「このDVD終わったらかなぁ。それか、先生が戻って来てから」


「これ、まともに見てるやつ、Aしかいねぇよ。だってほら、周り見てみろ」


「……寝てるね。みんな。すやすやと」


「てことで、俺たちは何すっかな」


「……寝よっか。右に倣えで。ね、どう？黒尾くんだって、いっつも寝てんじゃん」


「まぁ、そうだけどさ……。それとこれとは、違うんじゃないの」


「違わないよ。ほら、目瞑って」


「マジで寝んの？」


「マジで寝る」


「学校で寝ろって言われんの、俺初めて」


「奇遇だね。私も今初めて言った」


「ちゃんと寝たらご褒美ちょうだいよ」


「良いけどご褒美って何？ていうか、ちゃんと寝るって何」


「さぁ？」


「わけわかんない。……あっ、薄目開けてるし」


「そっちこそ、全然寝る気ねぇよな」


「黒尾くんの様子見てたら目が冴えちゃって」


「ふはっ、じゃあさ、やっぱり寝るより他のことしようぜ」
　

「他のことって？」


「ん〜。例えば……、Aの好きなものの話…とか」


「私の好きなもの知って意味ある？」


「あるよ。大アリ」


「何で」


「理由は言えないね」


「意地悪」


「意地悪で結構」

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