第14話 自由な人 ページ14
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黒尾くんは、誰もが羨む……というか、主に私が羨んでいる自由人だ。
今日は金曜日だからってわけのわからない理由で、レモネードと新品の赤ペンとミントのお菓子、それから、バレー部で作ったというタオルをくれた。
「どうしたのこんなに。いいの?」
そう尋ねると、『あげる』と、たったの3文字の返答で会話は終わった。
でもすぐに寂しくなったのか、黒尾くんはごそごそと自分のタオルを引っ張り出して、『見て。俺とオソロ』とニヤッと笑った。
絶対、黒尾くん以外のバレー部全員も持ってるやつ。
そんな考えがすぐに浮かんだけど、言わなかった。
らしくないほど嬉しそうにする黒尾くんが可愛かったから、なんてね。
うそうそ。
指摘するのは野暮かなって思っただけ。
おそろい嬉しいなんて、そんなことは……。無くはない。
「ありがとね。大事にする」
『他のヤツには秘密な』と、黒尾くん耳元で囁く。
「わ、わかった」
それでまた、私の胸は勝手にドキドキして甘く疼いた。
黒尾くんが他の子じゃなくて、私だけにくれた理由。
いろんな想像が、頭の中を駆け巡るけれど、そういうのを考えるのはやめにすることにした。
考えても、わかんないし。
もしかしてこの人は私のことが好きなんじゃないかと、ほんのちょっぴり自惚れたところで、彼には相手がいる。
かく言う私にも。
私と黒尾くんとの間をとりまく日常は、ほんの些細な違和感を内包している以外は、なんてことない普通の日々だ。
彼のぬるくて甘ったるい戯言に私がこっそりときめいて、その瞬間だけはお互いの相手の存在に目を瞑る、そういう日々。
でもそれが、あまり好ましくないことだということは、よくわかっていた。
私があれこれ考えていることは全部、自分にとって都合のいい言い訳にすぎないことも。
だけど、黒尾くんが“良い”っていつも言うから、良いってことにする。
都合のいい、あなたの理論に従って。
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pomme(プロフ) - 処刑人さん» ありがとうございます🫶🏻🧚🏻♀️🫶🏻 (2月24日 11時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
処刑人 - ちゅき♡ (2月24日 1時) (レス) @page48 id: 7578fd3293 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - かおりさん» ありがとうございます🙏🏻🥳 (12月25日 19時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
かおり(プロフ) - きゅんきゅんします💕続き楽しみにしております✨ (12月25日 5時) (レス) @page44 id: bad28e8810 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pomme | 作成日時:2023年8月7日 23時