黒尾くんのセオリー【黒尾鉄朗】 (ページ1)

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第０１話　あいさつページ1

．

「黒尾です。どうぞよろしく」

その人は、独特で、不思議な雰囲気をまとっていた。

噂に聞くよりも、ずっと。

“こちらこそ”

返事をするより先に、彼は机の上に突っ伏してしまった。

挨拶しそびれた。

私、Aです。おやすみなさい。

後頭部に向かって自己紹介をお届けする。

窓際。

一番後ろ。

特等席は、決まって彼のものらしい。

なぜか生徒からも先生からも容認されている。

黒尾くんは何かと特別なのだ。

高３。

黒尾くんとは初めて同じクラスになった。

彼が私のことを認知しているかは知らないけど、私は一方的に彼のことを知っている。

バレー部のキャプテン。

スポーツマンであり、かつ、頭も超良い。

人気があるし、人だかりができてれば、その中心にいるのは黒尾くんだってこともよくあった。

そして、学校一、モテるとの噂あり。

彼を追いかける女の子たちもいるらしい。

というか、私も見たことある。

けっこう本気ですごかった。

けど最近、彼女ができたって、大騒ぎになってたっけ。

泣き出す子もいたみたいだ。

なぁにそれ、アイドルでもあるまいし。

黒尾くんも黒尾くんできっと大変だ。

ただの学生なのに囲われちゃってさ。

実はウンザリしてたりして。

もしくは、意外にも楽しんでいたりして。

突っ伏してしまった彼には、尋ねようがなかった。