第25話 不要なこと ページ25
◆
なぜこの世にはテストというものが存在しているのか。
果たしてそれは本当に必要なのか。
俺は問いたい。
すべての教師に。
「集中集中」
谷地さんが俺の顔の前で、両手を軽く叩いた。
仕方なく手元のテキストと問題集に目をやる。だからといって、捗るかは別の話だ。
「Aさん、すげぇ。マジ教え方うめぇ〜。俺、絶対良い点取れる」
「ちょっと日向、買い被りすぎ。いいから黙って次へ進む」
「は〜い」
隣で繰り広げられるやりとりが、脳内をぐるぐる回る。
「なあ、これであってる?」
「ん、見せて見せて」
日向が答えの確認を求める。その度に、Aはぐいっと日向の方に体を寄せる。
たぶん、そこに深い意味は無い。
近づかなきゃ教えらんねぇだろうし。
なのに、Aがそうする度に、言い表せない不快感が胸をついた。
それ以上Aを近づけるんじゃねぇと、頭の中でけたたましくアラームが鳴る。
相変わらず手は止まったまま、眉間に寄るしわだけは頑なにそのままにした。
そのとき、谷地さんがガタンと勢いよく椅子を引いた。
「Aちゃん、私トイレ行ってくるから、影山くんのこと、よろしくね?」
そう言ったあと、谷地さんはなぜか俺に向かって拳をグッと突き出した。
「さっ、影山くんはどこまで進みましたか」
谷地さんに手を振ると、Aはくるりと器用に俺の席を振り返った。
「えっ、ああ…」
予想もしていなかった展開に、少したどたどしくなってしまう。
それでもAは、『良いとこまで進んでるじゃん』と、はにかんだ。
「ふっ…」
「え、何で笑うの」
「何でもねぇよ」
Aの笑顔が見れたからなんて、死んでも言わねぇ。
てか、言えねぇ。
「Aさん、来て」
日向がAを呼ぶと、Aは『今影山くんの見てるから、仁花ちゃんが帰ってきたらきいてくれる?』と、そっけなくあしらった。
日向が少し拗ねる。
それを見た俺は、勝ち誇った気分になった。
ほら、見ろ。Aはお前なんか相手にしねぇよ、とかって。
意味もなく胸を張りたくなった。
「影山くん、集中集中。まずはペン、持とうか」
Aがさりげなく俺の手に触れ、右手の隙間にペンを押し込む。
その冷えた指先の感覚にドキリとしながら、言われたとおり、それを握った。
そのペンは、俺のじゃなくて、Aがよく使ってる青色のペンだった。
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pomme(プロフ) - 読み専さん» コメントありがとうございます!!頑張らなきゃ! (2021年12月31日 20時) (レス) @page39 id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
読み専 - え、続き読みたい…更新待っております!! (2021年12月31日 11時) (レス) @page42 id: 0067091e87 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 蜜柑🍊さん» そうなんですwwめちゃくちゃ地味なところに謎のこだわりを詰め込んでます😎ありがとうございます!頑張ります!! (2021年11月21日 23時) (レス) @page35 id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑🍊 - あと、今更気が付いたのですがタイトルの付け方もお洒落で、全部5文字になっているんですね😄応援してます! (2021年11月21日 22時) (レス) id: e3fbbedd51 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 蜜柑さん» ひえぇ!嬉しい…!褒められ慣れてないのでソワソワしちゃいます🥺密柑さん、もうほんとめちゃくちゃありがとうございます! (2021年11月9日 20時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pomme | 作成日時:2021年9月20日 23時