55.グルクン ページ15
「なんの魚？」
「これはグルクン。奄美では赤ウルメ言うねんけど、沖縄のグルクンて呼び方のほうが聞いたことあるかも。東京の方では食べられへんなー」
「赤ウルメ？赤くないのに？青いじゃん」
「不思議やろー？」
「変なの…。この子南の魚なんだ」
「そ。でも、温暖化やからな、このまんまやとそのうち関東まで上がってまうかもしれへんなぁ」
「そっか…」
包丁を持った章大が、
「これから血抜きすんねんけど、よう見とって？」
ってあたしを見た。
「……えっ？」
エラから包丁を入れてザクッと音を立てた後、青かったグルクンが見る見る赤に変わっていく。なにこれ！
「さっきまで青魚みたいな色してたのに！」
「白っぽかったお腹とか、ほら、ヒレとかも。赤になったやろ？」
「すごい…だから赤ウルメ？」
「そうやろねーおもろいよなぁ」
内臓を出して鱗を取ってる章大の横でキラキラと飛んでくる鱗を光に透かしてみるけど、そのトリックはさっぱりわからない。
不思議ー…。
「夏はそんな脂乗ってないから、今日は唐揚げにしよなー」
って慣れた手付きでグルクンを粉まみれにして、ジュージュー揚げていく。
「あ、せや」
「なに？」
くるんと章大があたしの方へ振り返る。
「まだやった」
「なにが？」
章大の顔が近付いたかと思ったら、ふわりと唇が塞がれて、長いキス。
不意打ち過ぎて、突然心臓がバクバク。
「…おはよぉのチュー」
「……長いってば」
「嫌やったん？」
「そうじゃないけど」
「せやんな？やってまだ欲しそうな顔しとるし」
「ばっ…！」
「イヒヒ…ほんま可愛いわぁ」
あ、あかん焦げるわーって涼しい顔でグルクンを油から上げていく。
ずっと画面越しだったから、まだ章大のキスにも体温にも甘い空気にも慣れなくてドキドキしっぱなしなのに。章大は余裕な顔してる。
「なに眉間に皺寄せてんのぉ？」
「別に…」
「チュー足りひん？」
「………」
「お？」
「…章大ばっかり余裕」
つい本音が漏れる。目を逸らしたら、カリカリに揚げられて衣を纏ったグルクンと目が合った。
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みき(プロフ) - 夏休み編、完結おめでとうございます！おだやかな気持ちで東京に戻れて良かったです〜！新しい章も読んできます〜！ (2021年5月9日 16時) (
レス) id: c6ee858f5f (このIDを非表示/違反報告)
菜々実(プロフ) - みきさん» コメントありがとうございます！有休をまとめて消化したら、ついつい気持ちが緩んでしまってます 笑。これからお話の方も完結に向けて進めていきたいと思いますので、もう少しお付き合い下さい♪ (2021年5月9日 11時) (レス) id: 9f8e96caad (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 更新ありがとうございます！嬉しいです♪お仕事もお疲れ様でした。ゆっくり休んでくださいね。主人公の気持ちが痛いほど感じられて、切なくて涙が出そうになりながら読んでいたら、章大くんの気持ちも知れて…ホッとしました〜！！ (2021年4月15日 3時) (レス) id: c6ee858f5f (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 竜宮城のようなゲストハウス、素敵な絵が目に浮かびます！ボク。ともリンクしているのもすごいなぁと。インスタも始まり、チェックするものも多くなってきてますよね(^◇^;)そんな中でも更新ありがとうございます。続きも楽しみにしています♪ (2021年1月31日 14時) (レス) id: c6ee858f5f (このIDを非表示/違反報告)
菜々実(プロフ) - みきさん» お返事が遅くなってすみません！2人は翌日に離れ離れなのに、私が書くの遅過ぎてすごい遠そうな気がしてきました 笑。現実世界に全く追いつきませんが、ぜひ続きも楽しみにしていただけると嬉しいです！ (2020年12月21日 18時) (レス) id: 9f8e96caad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：菜々実
| 作成日時：2020年10月16日 20時
