5.ホンモノの体温 ページ5
土曜日。
夕方の配達で魚が着くからなって章大が言った通り、発泡スチロールの荷物が届いた。
今日は、いつもよりちょっと大きめ。
なんだろ。わくわくする。
キッチンに運んで蓋を開けると、たくさんの豆アジと黒鯛が一尾。
「すごー！」
豆アジはやっぱり唐揚げかな。
黒鯛はどうしよう。どうやって調理しようかなー。
…やっぱり、アイツに聞くのが早いよね。
うん。って1人で頷いて、スマホをタップする。
『もしもーし、A？』
「章大、魚届いた！ありがと！」
『無事届いてよかったわ！凄いやろ、あのチヌめっちゃすごい引きやってん！』
楽しそうな、章大の弾む声。
ん？弾む声…。
「あ、ごめん、今外？」
『ああ、そやで！』
「そっか、ごめん。黒鯛どうやって調理するのがいいかなーと思って。また後でいいや！じゃあ、また…」
って言い掛けたら、ピンポーン、ってインターホンが鳴った。
「ちょうど誰か来たみたいだから切るね！」
『はいはーい、後でな！』
通話を切って、急いで玄関を開けたら。
目に映ったのは、少し日焼けをした、海の男。
「え……なんで…？」
「久しぶりやぁ〜Aやぁ〜ホンモノ〜！」
へにゃーって笑って、そのままぎゅう、ってあたしを抱き締めた。
「章大…？」
「……会いたかったで」
さっきより、もっと力を込める章大の腕に、鼻の奥がツンとする。
なんでいるの。
なんで来たの。
何にも言葉にならなくて、章大の肩にグッておでこを押しつける。
「A？中、入ってもええ？」
あたしの顔を覗き込んで、章大はふわんと笑った。
「よう泣くなぁ…そんな泣き虫やったっけ？」
「章大のせいでしょ！」
イーッてやって、
「部屋、入って」
って玄関からリビングに向かうと、後ろから
「お邪魔しまぁす！」
って楽しそうな声が聞こえた。
「お、チヌ〜！久しぶり〜！」
発泡スチロールの中の黒鯛に話し掛けてる章大は、いつもの章大だ。
「刺身と焼きかな、オススメは。シンプルなんがええよ」
「そっか…」
「どう？捌くの慣れた？」
「だいぶ上達したよ」
「チヌは俺が捌くからな」
「え？」
「骨めっちゃ硬いから、頭落とすん女の子は大変やもん」
昔から。
男友達の中に一緒にいると、あたしも男友達と同じように扱うくせに。
ふとした時に女の子扱いするから、ちょっとあたしは特別なのかな？なんて自惚れたりした。
「もしかしてそのために来た…？」
「それもあるけど、」
章大の手が、あたしに伸びる。
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菜々実(プロフ) - みきさん» ありがとうございます！主人公の夏休みから始まるパート2をぜひよろしくお願いします♪ (2020年10月11日 21時) (
レス) id: 9f8e96caad (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 更新ありがとうございます。主人公の不安な気持ちがリアルに伝わってきます。雅紀先生も素直で純粋で…章大くんは気付いてるのか…いよいよ再会ですね！続きが楽しみです！ (2020年10月9日 21時) (レス) id: eb998853f9 (このIDを非表示/違反報告)
菜々実(プロフ) - あおさん» あおさん、ありがとうございます！長らくお休みをしていたので、なかなか思うように書けませんが、ぜひまたお付き合いいただけると嬉しいです！ (2020年9月19日 17時) (レス) id: 9f8e96caad (このIDを非表示/違反報告)
菜々実(プロフ) - みきさん» 短編もお読み頂きありがとうございます！のんびりの更新になりますが続きもぜひ楽しみにしていただけると嬉しいです！ (2020年9月19日 17時) (レス) id: 9f8e96caad (このIDを非表示/違反報告)
あお(プロフ) - ずっとずっと待ってました、新しいお話うれしいです (2020年9月13日 16時) (レス) id: c3910aa6c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：菜々実
| 作成日時：2020年7月18日 0時
