29.こころのなか ページ29
「こころちゃん、ユニコーン好きなのー？」
あたしの言葉に、静かに頷く。
「可愛いよねえ。先生も好き！」
あたしはそう声を掛けて、いつもこころちゃんと遊ぶミウちゃんの傍に促した。
初めて会った時から今までの数か月。
こころちゃんの声を聞いたことは、ない。
「僕も色々と勉強してはみたんですけど、場面緘黙ってなかなか難しいですねえ…」
閉園後、明日の日案を確認しながら雅紀先生が溜息を吐いた。
「こころちゃんですか？」
「はい…。お話しどころか、笑顔も見せてくれませんでした…」
がっくりって感じで項垂れてる。
分かるなあ、気持ち。
「ずっとあんな感じなんですか？」
「はい。もちろんお家ではよく喋るらしいですけど。煩いくらいって面談の時お母さん言ってたなあ」
「そっかあ…」
「あたしとしては、卒園までに声が聞けたらなあと思うんですけど」
「そんな長期戦！？」
「１年を長期戦というかは分からないけど、焦っちゃダメです」
まあ、そうですよね…って雅紀先生が俯く。
「雅紀先生、大丈夫大丈夫」
「そうですね！うん、大丈夫！頑張りましょう！」
大丈夫なんて言ったものの、どうしたらいいか、どうすべきか何にも見えない。
分からないことだらけだ。
こころちゃんがどんなことを思ってるのか、何にも見えなくて。
覗いてみたい、って思った。
『A〜新年度お疲れ〜！』
家に帰って章大に電話すると、いつもの笑顔で労いの言葉を掛けてくれる。
それだけで、ふーっと肩の力が抜けるみたい。
「ありがと」
『風呂上がりやね、ぴかぴかやん』
「あんまり見ないでよ…」
『ヤダねー見るもん！』
二ヒヒって笑って、画面を覗き込んでる。
いや、あなたの方がどアップよ？
『疲れた？』
「疲れた」
『例の先生はイケメンやったか？』
「あはは！そうだね！」
『なぬ！よそ見したらアカンからな！』
「あはは！しないしない！」
ぷんぷんって、またふぐみたいになってる。可愛い。
どんどん心の中のもやもやが晴れていく。
「章大は今日何してたの？」
『今日はな、例のゲストハウス行ってオーナーさんと打ち合わせしてー、帰って来てから色々思いついた案の絵をざっくり描いてー。海行って絵ぇ描いてー…って感じかな』
「ずっと絵…」
『そら絵ぇ描くために来とるからな！』
ほら、って画面に映してくれたのは、ピンク色のサンゴのキャラクターらしきもの。
「可愛い！」
『せやろー？』
「ゲストハウスの絵、７月だっけ？」
『そう』
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菜々実(プロフ) - みきさん» ありがとうございます！主人公の夏休みから始まるパート2をぜひよろしくお願いします♪ (2020年10月11日 21時) (
レス) id: 9f8e96caad (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 更新ありがとうございます。主人公の不安な気持ちがリアルに伝わってきます。雅紀先生も素直で純粋で…章大くんは気付いてるのか…いよいよ再会ですね！続きが楽しみです！ (2020年10月9日 21時) (レス) id: eb998853f9 (このIDを非表示/違反報告)
菜々実(プロフ) - あおさん» あおさん、ありがとうございます！長らくお休みをしていたので、なかなか思うように書けませんが、ぜひまたお付き合いいただけると嬉しいです！ (2020年9月19日 17時) (レス) id: 9f8e96caad (このIDを非表示/違反報告)
菜々実(プロフ) - みきさん» 短編もお読み頂きありがとうございます！のんびりの更新になりますが続きもぜひ楽しみにしていただけると嬉しいです！ (2020年9月19日 17時) (レス) id: 9f8e96caad (このIDを非表示/違反報告)
あお(プロフ) - ずっとずっと待ってました、新しいお話うれしいです (2020年9月13日 16時) (レス) id: c3910aa6c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：菜々実
| 作成日時：2020年7月18日 0時
