77.届かないキスー809 ページ37
「ありがとうございます、足りなくなりそうだったので助かりました！」
きれいなグリーンのパンパステル。
やっぱり、この色が必要だ。
「これくらい、いつでも！！」
「絶対、いい作品作りますから」
「はい」
大きく頷いた本橋さんは、次の担当作家さんのところへ急がなきゃいけないらしくて、私の進捗を確認すると慌ただしく出て行った。
「…よし」
作業机に座って。
画材を広げる。
絵本を描くのが、こんなにもわくわくするなんて。
これを手にしてくれた人が、子ども達がどんな顔をしてくれるんだろうって。
愛と夢を売る仕事が、こんなに幸せだなんて。
すごく久しぶりだ。
暫く経って、まだ深夜と呼ぶには早い時間。
ドアポストじゃなくて、スマホが鳴った。
「LINE…？」
忠義くんからのLINEを受け取って、筆を置いて冷蔵庫に走る。
何日も冷蔵庫に入れっぱなしの缶ビールは、思わず声が出るほど冷え冷え。
「お、来た来た！」
「忠義くん！」
「お疲れさん」
「うん、忠義くんもお疲れ様」
久しぶりに顔を見た忠義くんは、少し痩せた気がする。
それでもいつもの笑顔で、乾杯をする。
「痩せた？忙しい？」
「んー、単純によう動いてるからね。ツアー前はジム行ったりするし」
「忙しいのに？」
「体力つけな、ステージでぶっ倒れるもん！」
あっはっは！って豪快に笑う顔は、キラキラしてて。
「愛と夢を売る仕事、大変だけど楽しいね」
思わずそう言って。
「せやな。うん」
忠義くんもにっこり笑った。
「明日はなー、名古屋行ってくる」
「朝早いの？」
「結構早いな。でも新幹線で寝るしーそっからの移動車でも寝るから」
「そっか、くまだもんね」
「あは！そう、くまやからね」
お土産は何がいいとか、今度スペシャルドラマがあってそのクランクインがもうすぐだとか。
そんな話をしながら、夜空を見上げる。
「Aちゃん、ちょい、こっち」
忠義くんに手招きされて、仕切りに近付く。
「ちょっと顔出して？」
少し柵から身を乗り出すようにすると、忠義くんの長い腕が伸びてきて、親指がするりと私の頬を撫でる。
「ここ、絵の具付いとる」
「うそ！」
「ほんま、緑」
そう言って笑ったあと、そのまま親指が私の唇をなぞった。
「…さすがにキスは届かんな」
「…うん」
胸が、ぎゅっと鳴る。
「頑張ろな？」
「うん。明日から、頑張って！」
「ん！ありがとう」
涼しい夜風と、缶ビール。
愛しい人の横顔。
これだけで頑張れそう。
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菜々実(プロフ) - ちょびさん» ありがとうございます！嬉しいです♪このあとも2人の日常は続いていくと思いますが、平和にほっこりした日々を過ごしてほしいなーと言う願いを込めて、完結しました☆次回作も、ぜひ読みにいらして下さい！！ (2020年6月18日 18時) (
レス) id: 9f8e96caad (このIDを非表示/違反報告)
菜々実(プロフ) - かおりさん» こちらこそ最後までお付き合い頂きありがとうございました！寂しいと思って頂ける作品になって良かったです！ぜひまた読みに来てください(*'▽'*) (2020年6月18日 18時) (レス) id: 9f8e96caad (このIDを非表示/違反報告)
菜々実(プロフ) - 安紀子さん» 最後までお読み頂きありがとうございました！そう言って頂けて嬉しいです(*^^*) (2020年6月18日 18時) (レス) id: 9f8e96caad (このIDを非表示/違反報告)
ちょび(プロフ) - となりのくまさん、とても可愛くて好きな作品です。悩んで作られた新作がまた可愛いくまさんとりすさんでほっこりしました。今後の二人がどう進展するのかと気にはなりますが、柔らかい雰囲気でラストになってるから、ハッピーに祝福したいですね。次回作も楽しみです (2020年6月17日 23時) (レス) id: 73b5440736 (このIDを非表示/違反報告)
かおり(プロフ) - 菜々実さん！素敵な作品をありがとうございました。すきなひと〜や、デパートの王子様から。作品を心待ちにしてたので。終わっちゃって寂しいです。かわいくて、大好きな作品です。たくさん読み返させていただきます。また次の作品も楽しみにしちょります(☆∀☆) (2020年6月13日 10時) (レス) id: c32ad10686 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：菜々実
| 作成日時：2016年6月16日 22時
