74.くまの宿命ー808 ページ34
そう。
結局のところ、俺もただの男なわけで。
俺がAちゃんのモンやって実感、欲しいって思うんよ。
「ごめんな？」
俺が思わず言うたら、Aちゃんは不思議そうな顔でこっちを見た。
「どうして忠義くんが謝るの？」
「…俺がさ」
これはずっと。
いつもいつも、付いて回る。
「この仕事してなければ、Aちゃんもこんな思いせんで良かったやろ」
「忠義くん…」
「相手が俺やなかったら、こんな思いせんで良かったよな。ごめんな？」
何度も感じてきたこの気持ちは、ずっと付いて回る。
さすがに慣れて、割り切れたつもりでおっても、時々波のように押し寄せてくる。
「忠義くんだから好きなんだよ」
「……うん」
「好きな仕事を頑張ってる忠義くんだから好きになったんだよ」
「……うん」
「だから私も頑張ろうって思えるんだよ」
「……ん」
ほとんど最後の方は声にならん呻き声みたいになって。
泣きたいのはAちゃんも一緒やのに、なんで俺の方がぐちゃぐちゃに泣いてんねん、情けな。
「だから、会うなって言われても、私は…」
なんや、Aちゃんもぐちゃぐちゃに泣いとるやん。
「忠義くんに会いたいよ」
こんなに本気で、ベランダの仕切り壊してやろ思ったの初めてやわ。
「会ってるやん、顔見て喋っとる」
あはは！って笑って見せたけど、ほんまは。
すぐにでも抱き締めたい思ってる。
「そうだけど、そうじゃなくて…」
納得しない、何か言いたげなAちゃんもきっと、同じなんやと思う。
でもな？
「こうやって、手を伸ばせば届くところにおる」
隣のベランダに向かって、腕を伸ばす。
おんなじように伸ばしてくれた、Aちゃんの手に触れる。
さっきまでビール持ってた手はひんやりしてる。
もっと腕を伸ばして、肩に。
首に。
耳に。
唇に。
「触れられるとこに、おるやろ」
涙を拭ってあげたら、こくりと頷いた。
「玄関出たら３歩で行ける。でもその３歩を今は我慢な」
「いつまで？」
「Aちゃんの絵本が無事に出来て、本屋さん並ぶまで」
「そんなに…？」
「とか言うてアレやねんけど、絵本って大体どんくらいで出来るもんなん？」
「えーと、それはほんとに人によると言うか…」
音楽と一緒かなぁ。
1曲に半年とか掛ける人もおるし、1日でバーっと録ってミックスして、あっという間に生産回す人もおるし。
「Aちゃんの場合は？」
「んー、大体３ヶ月とか」
「３ヶ月かぁ」
「すっごく早くて２ヶ月とか」
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菜々実(プロフ) - ちょびさん» ありがとうございます！嬉しいです♪このあとも2人の日常は続いていくと思いますが、平和にほっこりした日々を過ごしてほしいなーと言う願いを込めて、完結しました☆次回作も、ぜひ読みにいらして下さい！！ (2020年6月18日 18時) (
レス) id: 9f8e96caad (このIDを非表示/違反報告)
菜々実(プロフ) - かおりさん» こちらこそ最後までお付き合い頂きありがとうございました！寂しいと思って頂ける作品になって良かったです！ぜひまた読みに来てください(*'▽'*) (2020年6月18日 18時) (レス) id: 9f8e96caad (このIDを非表示/違反報告)
菜々実(プロフ) - 安紀子さん» 最後までお読み頂きありがとうございました！そう言って頂けて嬉しいです(*^^*) (2020年6月18日 18時) (レス) id: 9f8e96caad (このIDを非表示/違反報告)
ちょび(プロフ) - となりのくまさん、とても可愛くて好きな作品です。悩んで作られた新作がまた可愛いくまさんとりすさんでほっこりしました。今後の二人がどう進展するのかと気にはなりますが、柔らかい雰囲気でラストになってるから、ハッピーに祝福したいですね。次回作も楽しみです (2020年6月17日 23時) (レス) id: 73b5440736 (このIDを非表示/違反報告)
かおり(プロフ) - 菜々実さん！素敵な作品をありがとうございました。すきなひと〜や、デパートの王子様から。作品を心待ちにしてたので。終わっちゃって寂しいです。かわいくて、大好きな作品です。たくさん読み返させていただきます。また次の作品も楽しみにしちょります(☆∀☆) (2020年6月13日 10時) (レス) id: c32ad10686 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：菜々実
| 作成日時：2016年6月16日 22時
