20-2 ページ48
分かっていて、私は動けなかった。
動きたくなかった。
例え、彼に想っている人がいたとしても。
例え、私だけが特別じゃなかったとしても。
今の、この時間の、この瞬間だけは、特別なんじゃないかな？って、思えてしまうから。
「…私も、この時間好きですよ。でも明日からは当分、この時間もお預けですね」
ロー「…そうだな」
次に船がまた浮上して天気が良い夜には、きっと私はまたこうやって甲板に出るんだろう。
…少しの期待を込めながら。
ロー「少しは機嫌治ったのか？」
「…機嫌ですか？」
ロー「診察室で、お前なんか拗ねてただろ」
「………あぁ！だから街に誘ってくれたんですか？」
ロー「女は好きだろ。騒がしい街とか、買い物とか」
ほらね。
あなたはまた、なんて事ない風に、他の人の話をするの。
それが私の機嫌を損ねている原因だとも知らずに。
今日の月がこの前のような満月で、ここで私の表情に気付いてしまったら…
彼はまた、他の人にしたご機嫌取りで私の機嫌を治そうとするのだろうか。
「…そうですね、楽しかったですよ」
ロー「俺の妹や母親も、好きだったからな」
「………え、？」
ロー「妹なんか特に、街に出て騒ぐのが好きだった。だからって訳じゃないが、お前もなんとなく、気が晴れるんじゃないかと思ってな」
表情がよく見えなくても、分かった。
彼が今物凄く、優しい表情をしていることは。
彼の落ち着いた声色は、いつも以上に私の耳によく届いて。
彼の匂わせてくる″女の人″が妹さんやお母さんだったことに気付いて、私は喜ぶべきはずなのに。
…なんでかな。
よく分からないけど。
優しい声色のはずなのに、どこか消えてしまいそうに儚くも思えて。
私はたまらず、すぐ隣にあった彼の手を握った。
ロー「……どうした」
「…いえ、なんとなくです」
ロー「…あったけェ手だな。眠いのか？」
「子供扱いしないでくださいっ」
ロー「悪かったな…″子供の女″の扱い方しか知らねェんだよ」
「嘘ですよねっ？キャプテンさんなら何百人もの女の人泣かせててもおかしくないですよっ」
ロー「…お前…俺をなんだと思ってんだよ」
「世界一カッコいいお医者さんで海賊団のキャプテンです」
ロー「…まァそれは間違ってねェ。″天才″が抜けてるけどな」
「……世界一カッコいいお医者さんで天才海賊団のキャプテンですか？」
ロー「どこに入れてんだ」
２人の笑い声が静かな海に響いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 164人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
REI(プロフ) - ひかりさん» ひかりさん、ありがとうございます(*´-`)甘々ローさん大好きでよかったです！続編も頑張りますのでよろしくお願いします(๑˃̵ᴗ˂̵) (9月23日 12時) (
レス) id: 9412439390 (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - 続編おめでとうございますー！！！大好きな作品がまだまだ見れるということに歓喜しております笑甘々ローさん大好きです！！これからも更新頑張ってください！！ (9月23日 8時) (レス) @page50 id: 4dc97dea49 (このIDを非表示/違反報告)
REI(プロフ) - ひかりさん» ひかりさん、コメントありがとうございます☺️私には勿体無いくらいのお言葉を頂けて、物凄く嬉しいですっ😭❤️これからもご期待に添えられるよう頑張りますのでよろしくお願いしますっ🥰 (9月19日 13時) (レス) id: 9412439390 (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - 私ローさん好きなんですが、最近作品を読み尽くしてしまって探していたところにこの作品に出会えました😆読みやすく、とても好みな作品で愛読しています！評価、お気に入り登録当たり前体操です👍🏻身勝手ながら応援してます！更新頑張ってください！ (9月19日 7時) (レス) @page19 id: 4dc97dea49 (このIDを非表示/違反報告)
REI(プロフ) - 零尉さん» 零慰さん、いえいえ、ややこしいことをしてしまいこちらこそ申し訳ありませんでした🙇♀️暖かいお言葉までありがとうございます😭 (9月15日 23時) (レス) id: 9412439390 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：REI | 作成日時：2023年9月3日 22時
