我々は青春の主役である［2］ (ページ4)

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第五十三回ページ4

今日は説明会のリハーサルで、なんとか早起きしてご飯を食べて髪を整えて、いざ出かけようとしたものの。

「最悪だ……」

びちゃびちゃと水溜まりに滴が叩きつけられる。私は溜め息をついて傘を差した。雨だなんて。せっかく髪の毛整えたのに。
雨粒のお陰でローファーに水が染み込み、髪は湿気で外ハネ状態、半袖の夏服では肌寒い状況で踏んだり蹴ったりだ。頑張ってあげていたテンションが一気に下がっていく。
手持ちのハンカチじゃ拭いきれずびしょびしょのまま校内を歩く。生徒会室にタオルとかドライヤー無かったっけ。いや普通に考えて無いわ。百歩譲って雑巾と扇風機しかない。グルッペン辺りが経費で購入してくれないかな。

「おはよーございます……」

生徒会室にはまだ誰も居なくて安心する。これ幸いと靴下を脱ぎ、年季の入った扇風機にあてる。私はため息をつくと、湿ったスカートのまま定位置に座った。

ゾムの事は普通に好きだ。ただそれは友愛としてで、付き合いたいとかそういう感情ではない。けれどあんなに真っ直ぐ気持ちを伝えてくれたゾムにはなんて言えばいいのだろうか。大先生は待たせていいと言っていたが、それもなんだか申しわけない。
何度考えても答えは浮かばなくて頭を抱える。どうしよう、とまたため息が漏れそうになった時、ドアが開いた。

「おはようございま……」
「あっ……」
「……おはよう、A」
「お、おはようトントン……」

タイミングってあるじゃん。今とても最悪。
まず気まずい。急に部屋飛び出して集まりにも行かなかったのに、祭りではまた変な出会い方をして変な別れ方をしてしまった。そして今、私は濡れ鼠。裸足。
……どうせならもうちょっとまともな見た目で会いたかった。
トントンの表情からは何を考えているのか分からないが、私の姿を一瞥すると荷物をかき分けて準備室の方へと消えていく。その対応に、思わず私は鼻の奥がツンとなってしまった。
怒ってるのか、呆れてるのか。どちらにせよ、あの頃みたいにふざけたりはしゃいだり出来ないのかな。
私は下を向く。自分の足は剥き出しのまま。
なんかもう帰りたい。せっかく頑張った髪でさえぐちゃぐちゃなのに。
唇を噛み、込み上げてくる熱い何かを堪えていると、不意に頭の上に何かが乗せられた。

「……ほら、これ使っとき」