第七回 ページ8
そりゃあ君のことについて相談していた、なんて言えるはずもなく。
「あ、えっと」
「いやあ、Aが調理実習でマフィン作ったからその話やで」
ナイスオスマン。すらすらと話を進めてくれる。
「へえ。で、それがマフィンか？」
「うう……」
私の手の中にある物体をじろりと見るトントン。
そりゃあ私だってこれをお菓子だなんていいたくない、ないけどさ。
「明らかにそれは違うやろ」
ですよねー。
うん。私もそう思うよ。こんなの食べ物ではないと思うよ。
ただ本人に言われるとどうも悔しいというか悲しいというか。
やっぱりトントンは料理得意の子がいいのかな。私みたいなのより、
「Aが手作りしたやつさ、見た目は酷いけど意外といけるもんやね」
脳内でぐるぐると考えこんでいると、突然オスマンが喋り始めた。
いきなりどうしたよ。てか意外とってなんだ。
「は、オスマン食べたんか？」
「うん。出来たてのときに」
ねー、なんて言われれば頷ざかるを得ない。
「いやあ、Aが頑張って作ったもんな。やっぱり頑張る子が作るものって美味しいよなあ」
うわ、なんか寒い。
……ごめんオスマン。普通の女の子が言われたらときめくだろうけど、長年一緒にいる私だと寒気がしたよ。
「二人ともちゃーんと遅れずに生徒会室に来るんやで」
じゃあな、と言って廊下の向こうに消えていくオスマン。
そっか、もう放課後か。早めに生徒会室に行って会計の結果出さなきゃ。多分大先生ガバってるから手伝わないと。
「じゃあトントン。私先に行ってるからね」
「それどうするん？」
指さされたのは黒い物体。
……完全に忘れてたわ。
「んー、誰かにあげたかったんだけどこれは流石に渡せないよね。捨てるしかないのかなあ。あ、それか大先生かシャオロンに食べさせるかも」
誰かってのはトントンだけど、きっと食べたくないだろうな。というかこんな失敗したのを私は食べさせたくない。
マフィンが一つ入った袋を握りしめて、自虐的に笑う。
「……まあ、こんなの誰も食べたくないよね」
じゃあね、とトントンに背を向けて生徒会室に向う。
……いや、それはできなかった。
「……ちょっと待ってや」
手首を掴まれ、私の足は止まる。
男子特有の骨ばった手は私を掴んで離さない。
「何、トントン」
「あー、えっとな」
気まずそうにちらりと目線をどこかに泳がせるトントン。
「そのマフィン、俺にくれへん？」
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さとうきび(プロフ) - 天ーてんーさん» コメントありがとうございます！今回は作品の中で唯一の純愛モノになっているので、最後まで読んでいただけると幸いです！ (2019年3月27日 23時) (
レス) id: a9eb261853 (このIDを非表示/違反報告)
さとうきび(プロフ) - かっぷけーきさん» 一年越しのコメント返し、大変失礼しました。コメントありがとうございます！これからもどうぞご贔屓に、よろしくお願いします！ (2019年3月27日 23時) (レス) id: a9eb261853 (このIDを非表示/違反報告)
天ーてんー(プロフ) - 初めてコメントさして頂きます。天ーてんーです。いや〜ほんまもう....しんどい。うん、しんどいですわ。言葉で表現するのが難しいほどに好きです。更新頑張ってください！楽しみに待ちますので(*^^*) (2019年3月24日 19時) (レス) id: 0db831385a (このIDを非表示/違反報告)
かっぷけーき - こんにちは。「その娘、我々の狐と踊る」でもコメントさせて頂きました、かっぷけーきです。神秘的な空間とは打って変わって甘酸っぱい青春の感じ、本当にはまりました！これからもさとうきびさんの作品楽しみにしています！頑張ってください！ (2018年3月25日 12時) (レス) id: 7858810c59 (このIDを非表示/違反報告)
さとうきび(プロフ) - つさん» 少女漫画くらいの甘酸っぱさが出来ればなー、と思いながら更新しています。コメントありがとうございました！ (2018年2月23日 21時) (レス) id: d7a52c799a (このIDを非表示/違反報告)
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