第三十回 ページ31
「よ、トントン……ってA！？」
「何があったん？いや、とりあえずポカリ飲み！」
パイプ椅子に座らされ、スポーツドリンクが入った紙コップを手渡しされる。言われるがまま飲むと、煮え立っていた頭が少しだけ冷めたのが分かった。
「ん……ゾム？」
「顔真っ赤やん！なんやトントン、A熱中症か？」
「そうかもしれん……さっき塩飴はあげたんだけど」
「シャオロン！そこのクーラーボックスから保冷剤出せ！」
「ほらよっ！」
どうやら私は本当に熱中症らしい。首に当てられた保冷剤にほう、と息が盛れる。
トントンの声に緊張していただけかと思っていたが、まさかこうなるとは。トントンの声、そう、このくらい距離が近くて……
「……大丈夫か？」
「と、トントン……！」
再び顔が火照る。だめ、むり、学ランかっこいい。
そんな私を見て症状が悪化したと慌てるトントンに、的確なツッコミを入れたのはシャオちゃんだった。
「……あー、トントンそろそろ出番やろ。はよ行ってこいよ」
「でも、Aが」
「だーいじょぶやって。ゾムも俺もいるし、心配すんなよ！な？」
「ん？……ああ！せやな！」
遠くに応援部の人達がこちらを見ている姿が見える。
そうだよ、私なんかよりもっと優先すべきものがあるじゃないか。学校中が楽しみにしているんだ。行ってきてよ、トントン。
「……いいから、行きなよ」
「A……」
「みんな、待ってるでしょ？」
……やっぱり、あの姿見せたくないなあ。でも、そういうのはただのわがままなんだよねえ。
なんだか鼻の奥がツンと痛んで、パイプ椅子の背もたれに寄りかかりながら顔を真上に上げる。
「……何があったんかは知らんけど、もうちょっと素直になってもええんちゃう？」
「……ぅるさいぃ……」
「そんな顔すんなよ！俺がおるやろ！」
「シャオちゃんじゃやだぁ……」
「やーい！シャオロン振られてやんのー！」
「うるせー！」
ぎゃんぎゃんと喧しい二人の声を無視して、ぼんやりとトントンの後ろ姿を見る。
トントンはなんでも出来て、人気者で、私の大好きな「幼馴染」た。それでいいじゃないか。それでいいのに。
「……変に、期待させないでよ……」
あんなことされたら、意識しちゃうから。
諦めたいのに、諦めきれなくなるから。
「ばーか！トントンのばーかばーか！」
この声はどうせ届かないから、広いグラウンドに向かってありったけの声量で叫んだ。
当然騒音でかき消され、私は膝を抱えて涙を堪えた。
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さとうきび(プロフ) - 天ーてんーさん» コメントありがとうございます！今回は作品の中で唯一の純愛モノになっているので、最後まで読んでいただけると幸いです！ (2019年3月27日 23時) (
レス) id: a9eb261853 (このIDを非表示/違反報告)
さとうきび(プロフ) - かっぷけーきさん» 一年越しのコメント返し、大変失礼しました。コメントありがとうございます！これからもどうぞご贔屓に、よろしくお願いします！ (2019年3月27日 23時) (レス) id: a9eb261853 (このIDを非表示/違反報告)
天ーてんー(プロフ) - 初めてコメントさして頂きます。天ーてんーです。いや〜ほんまもう....しんどい。うん、しんどいですわ。言葉で表現するのが難しいほどに好きです。更新頑張ってください！楽しみに待ちますので(*^^*) (2019年3月24日 19時) (レス) id: 0db831385a (このIDを非表示/違反報告)
かっぷけーき - こんにちは。「その娘、我々の狐と踊る」でもコメントさせて頂きました、かっぷけーきです。神秘的な空間とは打って変わって甘酸っぱい青春の感じ、本当にはまりました！これからもさとうきびさんの作品楽しみにしています！頑張ってください！ (2018年3月25日 12時) (レス) id: 7858810c59 (このIDを非表示/違反報告)
さとうきび(プロフ) - つさん» 少女漫画くらいの甘酸っぱさが出来ればなー、と思いながら更新しています。コメントありがとうございました！ (2018年2月23日 21時) (レス) id: d7a52c799a (このIDを非表示/違反報告)
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