第二十八回 ページ29
「……え？」
トントンの呟きと同時に私は口を押さえる。
やばい。つい言ってしまった。いやだってかっこいいんだもん。でも今のはやってしまった。自分の馬鹿。そこは普通に似合ってるじゃんって言えばいいのに！素で言ったから変な風に捉えられる。いや、捉えられていいのか？駄目だ。気まずくなる。
恥ずかしさで火照る顔を見られたくなくて、この場を離れる。そうだ、ブルーシート探してる途中だった。早く見つけて、大先生とコンタクト取らないと！
「ごめん今のは忘れて。私、探し物しててっ……」
「……待って」
後ろから掴まれた右手。あの日の夜と同じシチュエーションにぐっと鼓動が一気に早まる。どうしよう、探して早く戻らないといけないのに。そしたらトントンもみんなの所に行けるし、けれど。
……この姿を、見せたくない。ここでずっと見ていたい。
自分の気持ちに正直になるなら、このまま振り返る。仕事を優先させるなら振りほどいても走り出してもいい。見つからなかったって言えばいいし、トントンが掴む力も全然弱くて、今にも離れそうなほどで。
……優しいから。トントンは優しいから、こうして力を弱くしてるんだ。私がいつでも振りほどけるように。
そこまで考えて、私はトントンの方へ振り向いた。
「……なに？」
私が振り向くのが予想外といったように、少しだけ目を開くトントン。グラウンドの歓声も熱が入った実況の声も随分遠くに聞こえる。ここには二人しかいない。そんな風に思えてしまう。
トントンが口を開く。私は目を逸らさない。
「さっきの、」
「Aー！あったでー！」
……大先、生？
ふっ、と空気が緩んだように、一気に周りの音が耳に入ってくる。そうだ、大先生のこと忘れてた……！
ど、どうしよう。この場面を見られたら気まずいかもしれない。空気を読むのが上手い大先生だから、何気なく話しかけてくれるだろうけど、残された私達には気まずさしか残らないよ！
「……大先生となんかしてたん？」
「足りないやつ、ブルーシート探してて、と、トントン」
別にやましいことしてる訳じゃないんだけど、あ、手を離せば解決するのか！うん！
私がトントンの手をどうにかしようともう片方の手で掴んだ瞬間。
「……こっち」
何が起きたか。
気付けば私は壁を背中にしていて、目の前にはトントンの顔。目線だけを動かすと、ここはサッカー部の部室であることが分かる。
……そうだ。こういう経緯だ。
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さとうきび(プロフ) - 天ーてんーさん» コメントありがとうございます！今回は作品の中で唯一の純愛モノになっているので、最後まで読んでいただけると幸いです！ (2019年3月27日 23時) (
レス) id: a9eb261853 (このIDを非表示/違反報告)
さとうきび(プロフ) - かっぷけーきさん» 一年越しのコメント返し、大変失礼しました。コメントありがとうございます！これからもどうぞご贔屓に、よろしくお願いします！ (2019年3月27日 23時) (レス) id: a9eb261853 (このIDを非表示/違反報告)
天ーてんー(プロフ) - 初めてコメントさして頂きます。天ーてんーです。いや〜ほんまもう....しんどい。うん、しんどいですわ。言葉で表現するのが難しいほどに好きです。更新頑張ってください！楽しみに待ちますので(*^^*) (2019年3月24日 19時) (レス) id: 0db831385a (このIDを非表示/違反報告)
かっぷけーき - こんにちは。「その娘、我々の狐と踊る」でもコメントさせて頂きました、かっぷけーきです。神秘的な空間とは打って変わって甘酸っぱい青春の感じ、本当にはまりました！これからもさとうきびさんの作品楽しみにしています！頑張ってください！ (2018年3月25日 12時) (レス) id: 7858810c59 (このIDを非表示/違反報告)
さとうきび(プロフ) - つさん» 少女漫画くらいの甘酸っぱさが出来ればなー、と思いながら更新しています。コメントありがとうございました！ (2018年2月23日 21時) (レス) id: d7a52c799a (このIDを非表示/違反報告)
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