第十七回 ページ18
「ひとらーん、一緒にご飯食べよー。今ならなんと大先生もいまーす」
「食べる食べるー」
こちらにひらひらと手を振るオスマン。目が合ったので振り返しておく。
「Aはどうする？」
「ううん、今日はもう帰る。ありがとね」
「……そっか。お大事にね」
ひとらんは少し笑うと、オスマンがいる入り口の方へと向かった。
話す二人をよそに、私は帰宅する準備を進める。
昨日の出来事が頭から離れなかった。あの時のトントンの顔や声色を思い出すたびに胸が苦しくなって、結局あまり眠れずにいた。
今日はなんだか気まずくて、まだ一言も話せてない。
トントンの席を見ると、お弁当を取り出そうとしている後ろ姿が見える。他の人と話している様子はいつもと変わらないように見えて、昨日の事が嘘みたいだった。
授業に集中出来ず、板書を何度か見過ごしたり、移動教室に遅れそうになったりしていて、今日はもう早退してしまおうと思った。
「……はあ」
「何かお悩みで？」
「……オスマン」
にこにこと読めない笑顔をたやさないオスマンがいつの間にか、私の隣の席、ひとらんの椅子に座っていた。
「もう帰るん？」
「あー……ちょっと体調悪くてね」
「ふぅん…」
観察しているように瞳をより細めるオスマン。私は早く帰りたくて、鞄のファスナーを閉めて立ち上がった。
「大丈夫、明日の生徒会には参加するから」
「よし。お昼食べたら帰ろう」
そう言うと、私の鞄から勝手にお弁当の包みを取り出すオスマン。
「ちょっと、勝手に人の鞄漁らないでよ」
「まあまあ、ご飯食べてから帰ってもええやん」
「そういう問題じゃないでしょ」
「マンちゃーん、げどちゃんが遅いってー」
大先生が気だるそうにオスマンの名前を呼ぶ。その隣には欠伸をするひとらん。
「ほら、早く行きなよ。あとお弁当返して」
「悩み事、ない？」
「そんなの無いに決まって……」
『なあ、そいつのどこがいいん？』
「……無いよ。悩みなんて」
「嘘やな」
「……無いもん……」
「嘘」
本当はある。
不安に押しつぶされそうでたまらない。だからこそ、一人で冷静に考える時間が欲しかった。
「……オスマン」
「どうしたん？A」
名前を呼べば、いつものようにのんびりとした口調で答えてくれる。
「話だけ、聞いてほしい」
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さとうきび(プロフ) - 天ーてんーさん» コメントありがとうございます！今回は作品の中で唯一の純愛モノになっているので、最後まで読んでいただけると幸いです！ (2019年3月27日 23時) (
レス) id: a9eb261853 (このIDを非表示/違反報告)
さとうきび(プロフ) - かっぷけーきさん» 一年越しのコメント返し、大変失礼しました。コメントありがとうございます！これからもどうぞご贔屓に、よろしくお願いします！ (2019年3月27日 23時) (レス) id: a9eb261853 (このIDを非表示/違反報告)
天ーてんー(プロフ) - 初めてコメントさして頂きます。天ーてんーです。いや〜ほんまもう....しんどい。うん、しんどいですわ。言葉で表現するのが難しいほどに好きです。更新頑張ってください！楽しみに待ちますので(*^^*) (2019年3月24日 19時) (レス) id: 0db831385a (このIDを非表示/違反報告)
かっぷけーき - こんにちは。「その娘、我々の狐と踊る」でもコメントさせて頂きました、かっぷけーきです。神秘的な空間とは打って変わって甘酸っぱい青春の感じ、本当にはまりました！これからもさとうきびさんの作品楽しみにしています！頑張ってください！ (2018年3月25日 12時) (レス) id: 7858810c59 (このIDを非表示/違反報告)
さとうきび(プロフ) - つさん» 少女漫画くらいの甘酸っぱさが出来ればなー、と思いながら更新しています。コメントありがとうございました！ (2018年2月23日 21時) (レス) id: d7a52c799a (このIDを非表示/違反報告)
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