第十四回 ページ15
人のいない車内。足元に窓から射し込む光が伸びていく。
彼、トントンはまっすぐ前を向いていて、外の景色を眺めている。
私は時々横目でトントンの顔を見ながら、手元の鞄を手繰り寄せては抱きしめた。
あの後、体調を心配してくれたトントンは、私を家まで送ると言い出した。
家は隣で、別にそこまでしなくても、と言いかけて止めた。
この時だけは、私の事を見ている。優しさを私に向けてくれている。独り占めしている。
そんな感情に動かされるまま、私はトントンと電車に乗り込んだ。
その時、携帯が震えたのがスカートの布越しに感じた。
「電話？」
「いや、お母さんからメール。明後日まで帰って来ないってさ」
「あー、Aのおばさんとおじさん忙しいもんな」
お父さんは地方での企業開発、お母さんは写真家で、こうして数日間不在の時がある。
小さい頃は寂しかったけど、今はもう大きくなったし、私の為に働いてくれているから平気だ。
……まだちょっと寂しいけど。
だから、トントンの家にお邪魔してご飯を食べたりゲームしたりすることは少なくなかった。それももう何年も前のことだが。
「夕飯どうしようかなあ。外食でもしようかな」
「肉食べたいな」
「あー……ファミレスがいいかも」
「一緒に食べに行こか？」
「うーん、そうしよっかな……え？」
なんか今さらっと誘われたぞ？しかも了承しちゃったぞ？そして駅周辺のファミレス探し出したぞ？
「えっ、え？トントン今日はどうしたの？トントンの方がなんか変だよ？」
「は？」
「なんかすごく優しいし、いやいつも優しいけど、こんな……」
恋人、みたいな。
その言葉は喉の奥から出ることはなかった。
「……別に、……やろ」
「え、なんて？」
「うるせえ。そろそろ降りるからな」
「う、うん……」
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さとうきび(プロフ) - 天ーてんーさん» コメントありがとうございます！今回は作品の中で唯一の純愛モノになっているので、最後まで読んでいただけると幸いです！ (2019年3月27日 23時) (
レス) id: a9eb261853 (このIDを非表示/違反報告)
さとうきび(プロフ) - かっぷけーきさん» 一年越しのコメント返し、大変失礼しました。コメントありがとうございます！これからもどうぞご贔屓に、よろしくお願いします！ (2019年3月27日 23時) (レス) id: a9eb261853 (このIDを非表示/違反報告)
天ーてんー(プロフ) - 初めてコメントさして頂きます。天ーてんーです。いや〜ほんまもう....しんどい。うん、しんどいですわ。言葉で表現するのが難しいほどに好きです。更新頑張ってください！楽しみに待ちますので(*^^*) (2019年3月24日 19時) (レス) id: 0db831385a (このIDを非表示/違反報告)
かっぷけーき - こんにちは。「その娘、我々の狐と踊る」でもコメントさせて頂きました、かっぷけーきです。神秘的な空間とは打って変わって甘酸っぱい青春の感じ、本当にはまりました！これからもさとうきびさんの作品楽しみにしています！頑張ってください！ (2018年3月25日 12時) (レス) id: 7858810c59 (このIDを非表示/違反報告)
さとうきび(プロフ) - つさん» 少女漫画くらいの甘酸っぱさが出来ればなー、と思いながら更新しています。コメントありがとうございました！ (2018年2月23日 21時) (レス) id: d7a52c799a (このIDを非表示/違反報告)
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