第十二回 ページ13
「ここテストで似たようなやつ出すよ。要注意ね」
カツカツとチョークで書かれていく白い文字。
古典の先生はいつもゆっくりとした声で話すから眠くなる。今だって隣の席の男子が寝た。
「ちなみに先生はお酒好きなんだけど、昔の人は結構な豪酒みたいでね。実際に会ってみたいよねえ。そしたら飲み比べしたいな」
あ、ひとらんが舟を漕ぎ始めた。
分かる。分かるよその気持ち。
先生の授業は眠いしゆったりしちゃうんだけど、中間テスト近いし範囲内だから寝たらまずいことは理解する。
だけど、春の陽射しが入る五時間目。もう寝るしかないよね。
授業中はかけている眼鏡を上げて、シャープペンシルを動かす。
「あ、この下線部の活用は昨年の試験に出たから覚えておいて。よく間違えやすいから」
ついにひとらんが寝た。ご愁傷様です。
多分まともに聞いてるのは私を含めて十人もいないくらい。その中にはトントンも含まれている。
「そうそう、この間美味しい湯豆腐食べたんだけど、大根おろしつけて食べるのおすすめだよ。醤油と鰹節もいいんだけど、また大根が美味しくて」
こうなると先生の話は止まらない。私はのんびりと黒板を写すことにした。
「鍋といったらすき焼き美味しいよね。卵をといてお肉と一緒に食べるのは絶品だよ。そう、葱なんかも味が染みてて」
ノートを写し終えた私は、前方に見える彼を眺めてみた。
トントンは背筋を伸ばし、真剣にペンを握っている。あ、付箋貼ってる。
眼鏡を上げる仕草とか、時々ペンで額を抑えるところとか、一つ一つの行動が愛おしく感じる。
きっちりと分けられた髪も、彼のトレードマークだなあ、なんてね。
「……さ、ここまでの解説で質問はある？」
「先生、七行目の文法なのですが……」
これまた真っ直ぐに手を挙げて質問するトントン。自分も気になっていたところなので、ありがたく質問の答えを聞く。
「そうだね、確かにここは前後の文を変えてみると意味が二つにとれる。でも、前文の表現に注目すると問三の答えになるんだよ」
「……なるほど」
「流石トントン。ここもテストに出す予定だったんだよ」
ガリガリとノートに解説を書く。うん、古典は何とかなりそう。
やっぱりトントンはかっこいいなあ。あんなに堂々としてて、尊敬するよ。
「……あれれ、みんな寝てるの？」
先生、今気付いたんですか。
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さとうきび(プロフ) - 天ーてんーさん» コメントありがとうございます！今回は作品の中で唯一の純愛モノになっているので、最後まで読んでいただけると幸いです！ (2019年3月27日 23時) (
レス) id: a9eb261853 (このIDを非表示/違反報告)
さとうきび(プロフ) - かっぷけーきさん» 一年越しのコメント返し、大変失礼しました。コメントありがとうございます！これからもどうぞご贔屓に、よろしくお願いします！ (2019年3月27日 23時) (レス) id: a9eb261853 (このIDを非表示/違反報告)
天ーてんー(プロフ) - 初めてコメントさして頂きます。天ーてんーです。いや〜ほんまもう....しんどい。うん、しんどいですわ。言葉で表現するのが難しいほどに好きです。更新頑張ってください！楽しみに待ちますので(*^^*) (2019年3月24日 19時) (レス) id: 0db831385a (このIDを非表示/違反報告)
かっぷけーき - こんにちは。「その娘、我々の狐と踊る」でもコメントさせて頂きました、かっぷけーきです。神秘的な空間とは打って変わって甘酸っぱい青春の感じ、本当にはまりました！これからもさとうきびさんの作品楽しみにしています！頑張ってください！ (2018年3月25日 12時) (レス) id: 7858810c59 (このIDを非表示/違反報告)
さとうきび(プロフ) - つさん» 少女漫画くらいの甘酸っぱさが出来ればなー、と思いながら更新しています。コメントありがとうございました！ (2018年2月23日 21時) (レス) id: d7a52c799a (このIDを非表示/違反報告)
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