春の匂い.1 ページ35
みんなと出会ってどのくらい経ったのだろう。歳をとったせいか、真新しいの朝を迎える度にそんなセンチメンタルな事を考える。まだ若いといえばそうかもしれないが、このご時世だ。老いも若いも関係なく毎日に消費されていく。
「……シャオくんたち、今日帰ってくるんだっけ」
四日前から遠く西の国へ外交に行っていて、今回の話し合いによっては世界が大きく動く。武器を手放す未来がすぐそこに来ている、のかもしれない。
荒廃した土地に花が咲く日が来たら、きっとこの軍も解体されて、それぞれ自身の道を歩いていく。
「おはようAちゃん。今日休みだけど随分早いおはようやな」
「なんというか、習慣かな?」
談話室にはオスマンとひとらんらんが新聞を読んでいて、見出しは本土にて戦闘続行、由々しき事態』の文字。
「ここの戦いもまだ終わらんのか。結構長いとこやってるよなあ」
「和平も無理そうだね。そろそろこっちにも要請くるんじゃない?」
「コネシマ達がええ条件持ってきても違うとこで戦争起こるんならキリないわな。ま、他の国の方が物資あるしそこに行くやろ」
平和になんてほしいめう、なんて天を仰ぐオスマン。ひとらんらんもだるそうにコーヒーを飲んで新聞をめくっている。
今の段階でどこの傀儡にもなっていないうちの国だが、やはり戦争というものは疲れるものだ。鉄の臭いや発砲音なんて、慣れてはいけないものだ。
ただ私たちはそれが必要で、慣れる慣れないではない。当たり前のものだ。
「……早く戦争が終わるといいね」
「終わったらどうしよっかな。とりあえず自分の国に帰ろうかな。のんびり畑でもやりてえ」
「ひとらんはこっちでも同じようなことしてるやん。まあでも、せやな、とりあえずどこかに行きたいかも。戦車じゃなくて鈍行列車で、美味しいもの食べるとか」
「Aは何すんの?」
「私?うーん、そうだなあ……」
何しようかと考えて、ふと気付く。
「……私、何すればいいのかなあ」
故郷も無いし、行きたい場所もない。何人の命を奪ったか分からない私がシスターになる夢を叶えられるわけも無い。
そうするとしたい事が見つからなくて、どうしたものかと首を捻る。
「まあ、何かしなければいけない訳でもないしさ」
「やりたい事を探す、って事にしたらええんちゃう?」
「あ、それいいね。じゃあそれにしちゃおうかな」
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さとうきび(プロフ) - えるをん×@×IAさん» コメントありがとうございます!これからも精進してまいります。応援、よろしくお願いします! (2018年4月5日 22時) (レス) id: d7a52c799a (このIDを非表示/違反報告)
えるをん×@×IA(プロフ) - とても素敵な作品だなと思いながら読ませていただいている者です。これからも頑張って下さい(´q`) (2018年4月5日 0時) (レス) id: b8e4739678 (このIDを非表示/違反報告)
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