二十九話 ページ29
父と母の顔も覚えていない年頃に、住んでいた村は戦火に包まれた。
他の国の施設に預けられた私は、十二歳になると訓練学校に通い始めた。
ナイフの構え方から、相手の命を奪う方法まで、幼い脳内に教えこまれた。
今思うと悲しい世の中だったのだろう。
こつこつと努力を重ね、ついに第八部隊に採用される。
このとき、歳は十四歳だった。
兄さんと出会ったのはその頃。
たまに訓練学校に来て、戦争について教えてくれる人。
兄さんは色々な国に行くことが多いらしく、たくさんの話をしてくれた。
名前は知らなくて、みんなから「兄さん」や「先生」と呼ばれた。
そして、私に射撃を教えてくれた。
「上手やな、それ」
煙草を吸いながら指をさしたのは比較的小型のライフル。
つい最近教えてもらったばかりで、他の人よりちょっとだけ上手くできた。
「ほんと？」
「ああ、これからもっと上達するやろな」
そのままどんどん才能は目覚め、銃を持たせれば右に出るものはいなかった。
ただ、変わらずナイフの使い方は下手くそなままだった。
座学と射撃で首席をとれば、兄さんは褒めてくれた。
悲しいことがあれば、黙って傍にいてくれた。
まさに、お兄ちゃんのような人だった。
ある日、兄さんは私を花畑に連れて行ってくれた。
私は知らない花に興味をもてば、教えてくれる兄さん。
そのまま歩いていると、兄さんは言った。
「これから遠くに行かなきゃならない」
「どのくらい遠いの？いつ帰ってくる？」
優しく笑った兄さんは、いつもみたいに頭を撫でてくれた。
「A、大きくなったら好きなことをしてええんやで」
「どうしたの、兄さん」
「あと、大事なものはしっかり守るんよ」
その時の悲しそうな目は、今でも記憶に残っている。
そして、翌日にはもう姿を消していた。
寂しい気持ちはあったが、第四部隊隊長として任命されると忙しさは増していった。
そして、『事件』は起こった。
一人帰還した私を待ち受けていたのは、孤独だけだった。
苦しくて辛くて、何度も一人で泣いた。
兄さんに会いたい、隣にいてほしい。
そんな願いも虚しく、ただ時間だけが過ぎていく日々。
唯一私を庇ってくれたのは、エーミール教授。
ちょうどその時期に総統が変わり、今の総統閣下が指揮をとった。
ねえ兄さん、私は会いたいです。
会ってたくさん話がしたいんです。
ただ一つ私に言ってください。
その優しい声で。
頑張ったね、って。
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さとうきび(プロフ) - 怜さん» 返信が遅くなり申し訳ありません。確認したところ特には異常ありませんでした。ご報告ありがとうございました。 (2018年5月18日 22時) (
レス) id: d7a52c799a (このIDを非表示/違反報告)
怜 - 38話非公開になってませんか？ (2018年5月15日 0時) (レス) id: c7556a56f2 (このIDを非表示/違反報告)
さとうきび(プロフ) - 夜狐さん» コメントを返すのが遅れてすいません。これからもどうぞよろしくお願いします！ (2017年12月5日 22時) (レス) id: c845d614fc (このIDを非表示/違反報告)
さとうきび(プロフ) - 独奏さん» コメントありがとうございます！返すのが遅れてしまいましたが、これからもよろしくお願いします！ (2017年12月5日 22時) (レス) id: c845d614fc (このIDを非表示/違反報告)
夜狐 - 題名と内容が気になって見にきました！自分はこういうお話好きですよ♪次の更新楽しみにしてますね♪ (2017年11月7日 21時) (レス) id: 8cf2fbf423 (このIDを非表示/違反報告)
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