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人目を避けながらスタジオを出て、いのちゃんを俺の車で送っていく事にした。
掴んだ手首の傷口から血が滲んできて、そもそもの原因は俺にもあると胸が痛んでしまう。
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「…ごめん。それと、ありがとう」
「…なんで謝るの?それって俺が関与してんじゃないの?」
「ううん、俺は光を責めるつもりはないもん…」
小さく鼻をすすりながら、泣き腫らした目をしたいのちゃんが口を開いた。
ようやく無音から解放された車内。
運が悪く渋滞に巻き込まれて、まだまだ家路に着きそうにもなかった。
「あのさぁ…、」
「ん…?」
…俺ならいのちゃんを傷付けないのに。
なんて。
やっぱり口に出すのはやめた。
「…なぁに?」
「…えーっと、一枚しか無かったけど、絆創膏あげるよ」
「…ふふ、ありがとう」
サイドボードに突っ込んでた絆創膏を手渡すと、皺くちゃのそれを受け取ってくれる。
ようやくいのちゃんの笑顔が見れて、ずっと強張ってた肩の力が抜けた。
いつか弱った隙につけ込めば、俺を受け入れてくれるんじゃないかって思ってた。
でもさ、そんなんでコロッと心変わりする弱い奴じゃないもんな。いのちゃんって子は。
何年も側で見てたから知ってるくせに、ウッカリしてて忘れてたんだと思う。
「…全部、話さない?」
「ゆうとに…?」
悔しいから全部ぶちまけてやる、って魂胆ではなくて。
いのちゃんとゆうとをこれ以上傷付けたくないって、素直にそう思ったんだ。
だってさ、明日から俺たちが何も無かったように振る舞えても
何も知らないゆうとの不安は消えないでしょ?
「俺はいのちゃんの親友として、これ以上悲しむ姿を見たくないし。」
「ひかる…、」
「怖くないよ、大丈夫。きっとうまくいくから…俺を信じてよ」
それぞれの溝が埋まるなら、多少の覚悟は必要だ。
せめてものお詫びとして、いのちゃんが幸せになれるように全力でアシストしよう。
愛してるからこそ、傍観者の立場を貫くべきだった。
最初からそれしか方法が選べなかったんだから、仕方ないんだ。
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ぺこ(プロフ) - みつこさん» とても嬉しいお言葉ありがとうございます◎拙い文章でしたが感動していただけて励みになります(^ ^)! (2019年7月24日 2時) (レス) id: 5d6b925623 (このIDを非表示/違反報告)
みつこ(プロフ) - 切なくて、凄く感動しました。個々のエピソードがリアルとリンクして、本当に引き込まれるように読んでしまいました。素敵な作品を、ありがとうございました。 (2019年7月23日 20時) (レス) id: a8b7209441 (このIDを非表示/違反報告)
ぺこ(プロフ) - あんりさん» ありがとうございます(^^)他のお話も見てくださってて嬉しいです!これからも不定期で色々作ってくのでまた是非見にきてくださいー! (2017年11月14日 8時) (レス) id: 5d6b925623 (このIDを非表示/違反報告)
あんり - 完結おめでとうございます!ぺこさんの作品、すべて大好きで以前からこっそり応援させていただいておりました…!今回の作品はいつもと雰囲気が違うような…?とわくわくしながら楽しまさせていただきました*\(^o^)/*素敵なお話をありがとうございます! (2017年11月14日 4時) (レス) id: 656359cf02 (このIDを非表示/違反報告)
ぺこ(プロフ) - ヨウコさん» ありがとうございます( ´ ▽ ` )ひかるさんが言っちゃったという事でそろそろ終盤に向けて頑張ります! (2017年11月7日 19時) (レス) id: 5d6b925623 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぺこ | 作成日時:2017年11月2日 2時