・ ページ18
『ねぇ…ゆーと、』
『いのちゃんどーしたの?誰かに知られたらまずいでしょ…?』
『わかってるけど…でも俺…』
関係をひた隠ししてるわりに、詰めが甘いんじゃないのかって。
ゆうとを連れだって何処かへ行きたがるいのちゃんが珍しかったから
それとなく俺も用を足すふりして、楽屋から出て跡をつけてやった。
『最近さぁ…何かおかしくない?』
『ゆーと、ごめん…ごめん、ね』
『謝る理由って何?ちゃんと話してよ』
中の様子は見られないけれど、いのちゃんがキスでもせがんでるのかな、と息を飲んだ。
薄い扉に耳を押し付けながら、バクバク鳴ってる胸をぎゅっとおさえる。
聞こえる声はいつもより弱々しくて、それでもゆうとを求めている。
…いのちゃんは、ゆうととどんな風にキスをするんだろうか。
『黙っててごめんなさい…俺、ゆーと以外の人と、キスしたんだ…』
どうしたの?
だめだよ、いのちゃん…。
そんな事、馬鹿正直にバラしていいの?
『何それ…浮気したの…?』
『違うの…!でもこれ以上黙ってるのが辛くて…ごめんなさい…っ』
『……意味わかんない…』
盗み聞きなんてタチが悪い。
こんな姑息な真似をするつもりはなかったのに。
しかもそのキスの相手というのは、恐らく俺の事で間違いはないと思えた。
何を思ったのか、急にそんなカミングアウトをしたいのちゃんの心境は分からないけれど
きっとかなり思い悩んでたものが不意に爆発したんじゃないかな、って。
ゆうとの低い声に不穏な空気を感じて立ち去る事にした。
何食わぬ顔で廊下を歩いているつもりだったのに、通りすがりのスタッフから顔ニヤけてるよ?なんて言われた。
俺、気付けば自然と口角が上がっていたらしいね。
ゾクゾクする感覚はなんとも言えないスリルがあって、思わず武者震いする。
ねぇいのちゃん。
これって終わりの始まり、かもしれないよね?
.
239人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぺこ(プロフ) - みつこさん» とても嬉しいお言葉ありがとうございます◎拙い文章でしたが感動していただけて励みになります(^ ^)! (2019年7月24日 2時) (レス) id: 5d6b925623 (このIDを非表示/違反報告)
みつこ(プロフ) - 切なくて、凄く感動しました。個々のエピソードがリアルとリンクして、本当に引き込まれるように読んでしまいました。素敵な作品を、ありがとうございました。 (2019年7月23日 20時) (レス) id: a8b7209441 (このIDを非表示/違反報告)
ぺこ(プロフ) - あんりさん» ありがとうございます(^^)他のお話も見てくださってて嬉しいです!これからも不定期で色々作ってくのでまた是非見にきてくださいー! (2017年11月14日 8時) (レス) id: 5d6b925623 (このIDを非表示/違反報告)
あんり - 完結おめでとうございます!ぺこさんの作品、すべて大好きで以前からこっそり応援させていただいておりました…!今回の作品はいつもと雰囲気が違うような…?とわくわくしながら楽しまさせていただきました*\(^o^)/*素敵なお話をありがとうございます! (2017年11月14日 4時) (レス) id: 656359cf02 (このIDを非表示/違反報告)
ぺこ(プロフ) - ヨウコさん» ありがとうございます( ´ ▽ ` )ひかるさんが言っちゃったという事でそろそろ終盤に向けて頑張ります! (2017年11月7日 19時) (レス) id: 5d6b925623 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぺこ | 作成日時:2017年11月2日 2時