指切り (ページ11)

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「クロさんはどれが好きですか？」

真昼はクロを甘味処に連れ出してそう訊ねた。
目の前には鮮やかな彩りの和菓子が綺麗に
並べられている。

「………これだな。」

一通り目を通して見覚えのある一つを
指差す。これは以前、四男崇仁(たかひと)が
帰省した際に手土産として買ってきた
ことがある。

和三盆を軸に味付けされた淡い紅色の
それは、べっとり甘い菓子に慣れていた
クロに衝撃を与えた。

事実、クロは崇仁の買ってきたうちの一箱を
ぺろっと平らげてしまったくらいに。

「ねりきりですよね。美味そー!!買います？」

買いましょう、ね？、ね？と主張してくる
真昼の目を見ていると、自分まで食べたくなり
クロは店番の娘に声をかけた。

娘は愛想よく振り替えるとクロが示した
ねりきりを手際よく木箱に納めていく。
娘が差し出したちりめんで包装された木箱を
受け取り代金を払うと、クロは包みを
真昼に渡した。

目を丸くする真昼に帰ったら食おうと伝え、
もう少し近くの店を回ってみることにした。

真昼は幼い町娘のようにはしゃぎ回り、
終始とても可愛らしい。

太陽が真上に上った頃、暑さに
我慢ならなくなった二人は
湯編みでもしてから菓子を食べようと
屋敷への道を戻っていった。