8話 ページ9
決して大きくは無いその呟きに首を捻らせていると、少女が慌てふためいて、まるで何かに絶望したかのような表情をし青年に懇願し始めた。
「お…おいおい!嘘だろ!?嘘だよな、真似だよな!?オイラを止める為にアイツの真似をしてるだけだと言ってくれ!!」
「ここ数日は送仙儀式の準備で冒険者協会からの依頼もほとんどできていないから…どうしよう、今から4つくらい受けてくる?」
その送仙儀式という言葉に違和感を覚える。記憶が正しければ送仙儀式は璃月七星が取り仕切るものだ。
最近の七星は冒険者協会に手伝いでも頼んでいるのだろうか。
それに、送仙儀式を行うということはあの訃報の手紙の内容が真実であることを裏付ける。
本当にあの神は、死んでしまったのか。
いや、これは好都合だ。送仙儀式の準備をしてるこの子たちなら何があったのか詳しく知っているのかもしれない。
『送仙儀式の準備はさぞ疲れただろう。ここで出会ったのも何かの縁だ、モラは私が出すよ』
それに今はモラを節約しなければ後が大変なんじゃないか?
そういうと、少女の方が青年を説得し始めた。明日もどうやらしなくてはいけないことがあるらしく、少なくとも依頼を受けるのは無理だから甘えようと。
私も送仙儀式の準備で稼げていない人に払えという程冷酷じゃない、と思う。その旨を伝えれば、青年はしばらく悩んだ末、最終的にはいつかお金は返すと言って目の前の席に座った。
二人が席についたのを見て、先ほど注文した料理を2品とデザートを3品頼み、また席に戻った。
料理が付くまで何の話をしようか。
そう考えた時にふと気づく。
私と彼等はお互い素性を知らない。
いや、正確には私は彼等の名前は聞いていたからわかるが、彼らは私のことを知らないのだ。
自分のことを何も明かさずに聞きたいことだけ聞くのは少し、礼儀がなっていないのではないだろうか。
改めて彼等の顔を見てみれば、心なしか不安そうに見えなくもない。
『すまない、自己紹介を忘れていた。私はスメールの図書館館長のAだ。訳あって璃月に今日来た』
「あ、俺は旅人の空!こっちは…」
「オイラはパイモン!こいつの案内役だ!」
『空とパイモンだな。よろしく』
よろしく。そう差し出した手に手を重ねられ、その時二人の顔が少しほころんだ気がした。
やはり不審者だと思われていたのだろうか。
『そう言えば、どうして君たちが送仙儀式の準備をしてるんだ?』
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作者名:ぺろりとろろ x他1人 | 作成日時:2023年10月23日 21時