Memento mori. (ページ8)

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7話ページ8

心の中で、いただきますと唱え、レンゲでひと掬いしたもの口に含む。

綺麗な盛り合わせ、あんかけが灯りにわずかに反射して宝石のように輝いているのが食欲を唆る。
あんかけに合わせて少しとろみのあるスープには食材の出汁が効いており、味わい深い物になっている。
蒸し焼きされた肉汁が噛めば噛むほど溢れ出し、タケノコの食感のコリコリ感もしっかりと残っている。
大衆の前だというのにマナーを忘れがっつきたくなる衝動に駆られるような逸品。

非常に美味だ。20年前とは比べ物にならない。

？「な、なぁ。その料理、そんない美味いのか！？」

『ん？』

礼儀という理性を失わないよう気をつけて食べていて気がつかなかったが、どうやら私が話しかけられていたようで、少し視線を横にずらすだけで声の主であろう少女が宙に浮かんでいた。

『んむ…ぅん。すまない。口に何か含んだままだと失礼だと思って返答が遅れてしまった。ちなみにこの料理は絶品だよ』

？「うわぁ〜〜〜！！！なぁ空！オイラも同じものが食べたいぞ！」

空？「ちょ、パイモン。急に失礼だよ！！すみません。うちの非常食が…」

パイモン？「オイラは非常食じゃないってば！！何度言えばわかるんだよ！」

少女に返事をしてすぐに金髪の見たこともない服装をした青年がやってきて、バツが悪そうに頭を下げた。
パイモン、空とお互いを呼び合う姿から、二人は知り合いのようだった。

『気にしないでいいよ。美味しそうなものに惹かれてしまう気持ちはよくわかるからね』

それに、彼女とは比べ物にならないほど失礼なやつも山ほどいるのだ。こんなことでいちいちイラつくほど心は狭くは無い。
少女は体を軽く腕を後ろに回し、ふわりと顔を横に倒した。

「えへへ、やっぱり美味しいご飯に匂いには勝てないよな！」

『気になるなら、もう一つ注文しよう。出会ったのも何かの縁だし私が奢るよ』

「え！？そんな悪いです。モラは自分達で…」

そういって青年はが自分の懐を確認した時、一瞬石のように固まった…もしくは時間が止まったかのように動かなくなってしまった。
口から何か空気のようなものが出たかと思えば、一言「モラが…ない…」と呟いた。

モラが、ない？？