Memento mori. (ページ7)

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6話ページ7

さて、今の時刻は19:00。私が認識していたよりオルモス港から璃月は遠かったらしく、宿探しも相まって時間が過ぎていた。
夕餉にはちょうどいいかもしれないな。

宿主の外に出る旨を伝え外に出れば、橙色の灯りが街を照らしていた。
自分の舌と腹の具合とも話し合い店を見て回っていると、一軒の食堂が。正確にはその食堂のコックが目に入った。

［万民堂］と掲げられた店の店主と、その横に少女が一緒に料理を手にかけている。
店主の方は、まだ若い時に会ったことがある。20年前にここを訪れたことがあるのだ。名前は確か、［卯］だったろうか。
あの時の彼はまだ自分の店を持ち始めてすぐだった気がするが、まさかあんな人気な店になるとは。隣の少女は、おそらく娘だろう。

『…もうそんなに時間は経っていたのか』

今の私と同じくらいだった男が自分より歳をとり父親になっているというのは何度経験しても慣れないものだ。
感慨深くもあるが、それと同時に形容し難い虚しさが胸を覆おうと影が差してくる。

空腹のせいにしよう。せっかくなら彼とその娘の料理も食べよう、と。無理矢理にそう捉え、万民堂に近づいた。

「いらっしゃい！何か食べていくかい？」

『璃月三糸を一つ。あんは掛けられる？』

「もちろんだ！お客さん随分と珍しい注文をするな〜！出来上がったらすぐに持っていくから席で待っていてくれ！」

モラを先に払い、用意された席へと向かう。
店の中から卯と少女の会話の節々が聞こえてくるのが微笑ましく、久方ぶりの料理に胸を躍らせていた。

数刻待つと、少女が料理を片手にやってきて、目の前の卓上にことりと置いてくれた。
満面の笑みで「お客さんがあんかけってってくれたから、新しいメニューが思い浮かびそうなの！」と感謝だけを私に伝え、急ぎ足で店に入っていった少女は、彼に似て料理が人生なのだろう。ああやって突き進んでいこうとする姿は何度見てもいいものだ。