Memento mori. (ページ6)

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5話ページ6

_璃月港に到着いたしました。足元に注意してお降りください

その声を認識した時、天井の色が目に入った。
船に乗ってから揺られる中ですぐに寝てしまったのはなんとなく自覚していた。
完全に眠れたわけではないとわかるのは、節々に寝返りを打った記憶がある気がするからだろうか。

船から降りて辺りを見渡せば、20年前と変わらず人々が賑わってる貿易で盛んな璃月港がそこに広がっていた。
貿易港ならではの喧騒、秩序と公平を体現したかのようなこの国は気持ちがいい。

『…宿を探そう』

入国検査をしつつ港から少し離れたチ虎岩へ向かえば、港特有の騒々しさから一変。人々の暮らしの中心に入ることができた。
宿を探している時に知ったが、つい先日七星迎仙儀式があったらしい。その関係でどの宿も満員で野宿も考えたが、人の出入りが比較的少ない宿を見つけることができた。
決して煌びやかとは言い難くシンプルな宿ではあるが、人を不快にさせない清潔感、耳を撫でるような緩やかな音楽はまるで自分の家に帰ってきたかのような錯覚さえ起こす。

中には受付カウンターに一人女性がいるだけで、胸元のカードを見る限り彼女がここの宿主だろうということが推察できる。

『どこか長期滞在できる部屋は空いていますか』

「お一人様ですね。2室空いていますが、他にご希望はございますか？」

『特にこれといった要望がないから、あなたのおすすめで』

受付の女性は二つ返事で承諾し、木札を渡してくれた。
部屋番号が書かれているその札通りに向かえば、簡易的でかつ必要最低限なものだけが置かれた部屋があった。

装飾が控えめというのは、とてもいい。
後から自分でどう飾り付けようかとか、どの空間を残しておこうかと部屋にいるだけで思考することが楽しくなる。

ここは宿であり、自分の部屋でないのが悔やまれる。今度カーヴェ君でも連れて璃月に来てみるのもいいかもしれない。